最新記事
日本社会

「男性はカネがなければ結婚できない」日本の時代錯誤のジェンダー観で少子化はさらに進む

2023年9月6日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

これをもとにジニ係数を算出すると、0.553にもなる(計算の方法については、前回の記事「日本の労働者の収入格差は、今やアメリカよりも大きい」を参照)。偏りが大きいとされる0.4を超えており、未婚男性と既婚男性の年収の違いは相当大きい、ということになる。男性にあっては、結婚に際して経済力がモノをいう度合いが高い、ということだ。

同じ方法により、このジニ係数を主要国について試算してみた。カネがない男性はどれほど結婚しにくいかを測る尺度で、「結婚ジニ係数」と呼ぶことにする。<図1>は、7つの国の数値を棒グラフにしたものだ。

data230906-chart02.png

結婚ジニ係数は、比較対象の7つの国では日本が最も高い。カネがない男性は結婚できない度合いが最も大きい。男性が一家を養うべき、というジェンダー観が強いためだろう。女性の側は、結婚すると家事や育児をほぼ一手で担うことになり、収入は大きく目減りする。よって、結婚相手の男性に高い収入を求めざるを得ない。だがこのご時世、そういう男性は少ない。

男女平等が進んでいるスウェーデンでは、結婚ジニ係数は小さい。男性の稼ぎのみに依存するのではなく、夫婦二馬力で生計を立てていく展望が持てるためだろう。ちなみに7つの国の結婚ジニ係数は、2019年頃の合計特殊出生率とマイナスの相関関係にある。

未婚化・少子化の進行は、時代錯誤のジェンダー観が生きながらえていることにもよる。「男は仕事」といっても、男性の腕一本で一家を養える時代ではないし、「女は家庭」という考え方は、結婚による損失(逸失所得)を女性に強く意識させる。

令和の時代の若い男女が、結婚をためらう所以だ。

<資料:「ISSP 2018 - Religion IV」
    「ISSP 2019 - Social Inequality V」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、24%の対米関税を1年間停止へ 10%の関税

ワールド

UPS貨物機が離陸直後に墜落、4人死亡・11人負傷

ワールド

パリ検察がTikTok捜査開始 若者の自殺リスクに

ワールド

中国、輸入拡大へイベント開催 巨大市場をアピール
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中