最新記事
ウクライナ情勢

クリミアのロシア軍施設を攻撃したのはストームシャドウ?イギリスが供与した長距離ミサイルの戦果と性能を動画で振り返る

Did Ukraine strike Crimea base with Storm Shadow missiles? What we know

2023年7月20日(木)16時49分
イザベル・ファン・ブリューゲン

戦闘機から投下されるストームシャドウ。敵レーダーを避けて低空を飛び、射程は250〜300キロといわれる Interesting Engineering/YouTube

<ロシアとの全面戦争を恐れるアメリカがいまだに供与を拒否している長距離ミサイルが、ロシア支配地域の重要な標的を次々破壊している>

ロシアが実効支配するクリミア半島キロフスク郡にあるロシア軍の施設で7月19日に爆発が起きた事件について、ウクライナ軍が長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」で攻撃したのではないか、という憶測が広まっている。

 
 
 
 

ロシアが任命したクリミア自治共和国のセルゲイ・アクショーノフ首長は、事件について、ロシア軍の訓練場で火災が発生し、周辺住民2000人以上が避難していると述べた。メッセージアプリ「テレグラム」のロシア連邦保安庁とつながりのある複数のチャンネルは、同基地で複数回にわたる爆発があったと報告したが、アクショーノフは火災の原因についての詳細は明らかにしなかった。

ウクライナはクリミア半島にあるこの基地を攻撃したことを認めていないが、ロシアの一部の軍事ブロガーやテレグラムのチャンネルは、ウクライナ政府が同基地を「ストームシャドウ」で攻撃した可能性を示唆している。

長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」は、ウクライナが6月初旬から始めた反転攻勢に先立って、5月にイギリスがウクライナに供与したものだ。

「偽の声明文」が出回る

ミサイル技術の専門家であるファビアン・ホフマンは5月にツイッターへの投稿で、「ストームシャドウ」にはクリミア大橋を攻撃できる潜在能力があると指摘していた。クリミア大橋はクリミア半島とロシア本土をつなぐ唯一の橋であり重要な補給路で、その破壊はウクライナ軍の重要な戦略目標になっている。

ロシア政府寄りで110万人の登録者を擁するテレグラムチャンネル「Rybar(リバル)」と、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」とつながりのあるチャンネル「グレーゾーン」はいずれも、今回の攻撃は「ストームシャドウ」を使って行われたものだと主張した。ロシアの国内ニュースを扱うチャンネル「Brief」も、同様の推測を伝えた。

本誌はこの件について、ロシアとウクライナの外務省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

これまでのところ、「ストームシャドウ」が使われたことを示唆する証拠はない。ウクライナは攻撃を認めておらず、ロシア政府もまだウクライナ政府を名指しで非難はしていない。だが7月19日の朝には、ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ局長が攻撃を認めたものだとする「偽の声明文」がソーシャルメディア上に出回った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハメネイ師標的なら対応「無制限」、高濃縮ウランは移

ワールド

焦点:トランプ氏のイラン攻撃は「最大の賭け」、リス

ワールド

韓国、米に懸念表明へ 半導体装置の特例措置撤回観測

ワールド

米がイラン核施設攻撃、和平迫るトランプ氏 イスラエ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中