最新記事

F1

撤退したばかりのF1にホンダはなぜ5度目の参戦をするのか?...「夢の力」と「攻めの姿勢」

The Dream Redux

2023年6月21日(水)12時38分
井上久男(経済ジャーナリスト)
ウィリアムズ・ホンダ

「ウィリアムズ・ホンダ」は1986年と87年にコンストラクターズ・チャンピオンに輝いた(写真は86年モナコGPのナイジェル・マンセル) JEAN-YVES RUSZNIEWSKIーTEMPSPORTーCORBISーVCG/GETTY IMAGES

<2026年からのF1再参戦を読み解くキーワードは「脱炭素」「米国市場」「サウジアラムコ」。ホンダの「夢」と「攻め」の皮算用について>

ホンダが自動車レースのフォーミュラ・ワン(F1)に再参戦する。2026年から英アストンマーチンのチームにエンジンなどのパワーユニット(PU)を提供する計画を、ホンダの三部敏宏社長が5月24日に発表した。

ホンダは2021年、4度目のF1への参戦から撤退したばかり。20年10月2日に撤退を発表した際に、当時の八郷隆弘社長は「経営資源を電動化に集中させるため」と説明していた。

撤退表明から2年半余がたち、何が変わったのか――。そこからはホンダを取り囲む環境の変化とそれに対応するための戦略や課題が見て取れる。

まず、今回の5度目の参戦について、3つのキーワードからひもとけば合点がいく。1つ目がF1のルール改定だ。

参戦によって得られるノウハウ

F1の世界でも脱炭素を推進するために、これまでは出力の2割までしか電動モーターが認められていなかったのが、26年からは5割まで認められるようになった上、二酸化炭素を出さない100%カーボンニュートラル燃料(合成燃料)の使用が義務付けられた。

21年に社長に就任した三部氏は「2040年までに全世界で販売するホンダの新車を全て電気自動車(EV)と燃料電池車にする」と宣言し、電動化を加速させる考えを表明している。

今回のルール改定によってF1でも電動化が進むことで、ホンダは、参戦により得られるノウハウが量産車や新規事業に活用できると判断した。

例えば、国内で最も売れている軽自動車の「N-BOX」シリーズはF1技術者が開発した。また現在、ホンダが開発中の空飛ぶクルマ(電動垂直離着陸型のEVTOL)にも、F1で培う技術が転用できるとみられる。

三部氏は「F1の現場は技術者を育てる道場。ハードルが高いほど得られる経験知も大きい」と語っている。

2つ目のキーワードが米国市場だ。ホンダの収益源であるアメリカでの四輪車の小売り台数は、23年3月期決算のデータによると、前年同期比で27.7%マイナス、北米地区の営業利益も37.6%減少した。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ジャクソンホール会議、8月22─24日に開催=米カ

ビジネス

米国株式市場=最高値更新、CPI受け利下げ期待高ま

ビジネス

米シスコ、5─7月期売上高見通し予想上回る AI支

ワールド

ニューカレドニアに非常事態宣言、暴動の死者4人に 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中