最新記事
イタリア

エロくて下品で豪快な「政界のドン」ベルルスコーニが逝く

Death of the “Teflon Don”

2023年6月20日(火)13時10分
バービー・ラッツァ・ナドー(ジャーナリスト、ローマ在住)

230627p28_BCN_03.jpg

マッチョなイメージを売り込んだ UMBERTO CICCONIーHULTON ARCHIVE/GETTY IMAGES

それ以前にもビル・クリントン元米大統領が不倫疑惑で窮地に陥った際、ベルルスコーニは頼まれもしないのにクリントンの応援団を買って出た。

とはいえベルルスコーニの一番の親友であり、最大の頭痛の種ともなったのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。大衆紙が2人の関係を大きく取り上げたのは08年。ネタ元はイタリア人コールガールが書いた暴露本だった。

彼女はローマのベルルスコーニ邸にある四柱式ベッドで彼とセックスしたと告白。そのとき彼が「これはプーチンのベッドだ」と言ったという。絶倫自慢の男が同好の士に「せいぜい楽しみたまえ」と愛用のベッドを贈ったのだろうと、彼女は解釈した。

そのプーチンがウクライナ侵攻を開始すると、ベルルスコーニはまずい立場に置かれた。当初はプーチン批判を控え、「欧州の首脳はプーチンの要求をのむようウクライナを説得して和平を実現すべきだ」などと述べていた。

侵攻後1カ月余りたってようやくプーチンの過ちを認め、「失望し、悲しんでいる」と発言した。

実業界から政界入りし、短期間に政権を握った点で、ベルルスコーニはよくドナルド・トランプ前米大統領に例えられるが、本人はそれを非常に嫌がっていた。

トランプも「テフロンのドン」と呼ばれ、政治スタイルも似ているが、ベルルスコーニはよく勉強していて、地政学的な知識はなかなかのものだった。

本誌のパリ支局長・中東総局長を務めたクリストファー・ディッキーと筆者がインタビューを行った際、その場には彼を補佐するために側近たちが何人も控えていた。

だが意外や意外、彼は中東政治の事情に通じ、欧州各国の政治状況については私たちに手ほどきするほど。その間、出番のない側近たちは黙々とお茶を飲み軽食を食べていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 2
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    ただのニキビと「見分けるポイント」が...顔に「皮膚…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中