最新記事

大統領選挙

ほぼあらゆる国の大統領選挙は大接戦...本当にいいことか? 有権者が大きく二分される理由とは

NO CLEAR MANDATES

2023年6月8日(木)13時00分
ダン・ペリー(戦略コミュニケーション会社「サンダー11」のマネージングパートナー)

230613p26_SKY_03.jpg

エルドアン(左)とクルチダルオール DILARA ACIKGOZーREUTERS

同様のことは、アメリカでも起きている。近年の大統領選はことごとく、2人の候補者の得票率がほぼ拮抗している。

21世紀の大統領選を振り返ると、勝利した候補者の得票率は、2000年が48%、04年が51%、08年が53%、12年が51%、16年が46%、20年が51%となっている。バラク・オバマ元大統領の地滑り的な圧勝と評された08年の大統領選でも、オバマの得票率は53%どまりだったのだ(50%未満の得票率で当選した候補者が2人いたのは、アメリカ大統領選の独特な大統領選挙人制度が原因だが、この点は本稿のテーマとはまた別の問題だ)。

ドナルド・トランプ前米大統領は、20年の大統領選で再選を目指したが、僅差で敗北。権威主義的政策を前面に押し出して来年の大統領選に再挑戦する構えだ。トランプが共和党の候補者指名を獲得すれば、民主党候補と戦う本選挙で、再びおよそ半分の票を得る可能性が高い。

フランス大統領選では、中道派で基本的にはリベラルなエマニュエル・マクロンが2度続けて、決選投票で極右のマリーヌ・ルペンをやすやすと退けている。しかし、これは、ルペンの極端な人種差別主義が嫌悪されたためだ。右派の有権者の多くも、この点を理由に決選投票でルペンへの投票を避けたのである。

ルペンが決選投票に進んだ17年と22年、その父親であるジャンマリ・ルペンが決選投票に進んだ02年を除いた最近4回の選挙では、当選した候補者の決選投票での得票率は、1988年が54%、95年が53%、07年が53%、12年が52%だった。

人間の「善」と「悪」の戦い

こうしたパターンは、欧米だけで見られる現象ではない。ブラジル大統領選でも、勝者の得票率は、14年は52%、18年は55%、昨年は51%だった。

それは、大統領選に限った傾向でもない。議院内閣制の国でも、同様のパターンが見られる場合がある。

イスラエルでは、多くの政党が乱立しているように見えるかもしれないが、それらの政党は大きく分けて2つの陣営のいずれかに属している。中道・リベラル派の政党とアラブ系の政党が構成する陣営は、欧米流の自由民主主義国家を目指している。それに対し、ナショナリスト政党と宗教政党の陣営は、トルコやイランに似た権威主義的な政治体制を志向している。

イスラエルの近年の選挙ではことごとく、両陣営の得票率が拮抗している。昨年の総選挙では、右派ポピュリスト陣営が勝利し、ベンヤミン・ネタニヤフが首相に復帰したが、得票率は49.5%にとどまった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中