最新記事

メンタルヘルス

「気分が灰色」はパニック障害だった──さらけ出したからこそ得た仲間と一緒に乗り越えて

When Depression Comes, Open Up

2023年4月27日(木)14時57分
ジェイ・グレイザー(FOXスポーツコメンテーター)
ジェイ・グレーザー

グレイザーはアスリートたちに心の痛みをさらけ出せと伝えている CINDY ORD/GETTY IMAGES FOR SIRIUSXM

<子供の頃から目が覚めると「灰色の世界」に襲われた...。つらい気持ちを臆せずに周囲に打ち明けたからこそ言える、「心の痛みはさらけ出せ」という言葉>

子供の頃から目が覚めると、いつだって気分は灰色だった。当時は言葉で表現できなかったが、子供時代の最初の記憶は不安と鬱だ。

灰色とは、自分が宇宙から嫌われているという感覚のこと。私が不幸になるのを世界が望んでいて、自分は愛される価値がないと思えてしまう。

灰色の気分に加えて不安に襲われると、空が落ちてくるように感じる。心臓の鼓動が激しくなり、手が震え、目がぐるぐる回り始める。そしてパニック発作が起こる。

私は1999年にスポーツ記者の仕事を始めたが、正社員になるまで10年以上かかった。

ニューヨークで年収1万ドル以下の暮らしを11年続けた。しかし不安と鬱が「私には価値がない」と教えてくれたからこそ、もっと頑張って自分を証明しようと決意できた。たいていの記者は9時から夕方5時の勤務だが、私は朝7時から夜10時半まで働いた。

初めてテレビに出たのは2005年。場所はネバダ州にあるアメリカンフットボールのスタジアムだ。試合がなく観客席も空っぽの日で、私とカメラマンしかいなかった。

そのとき突然、壁が崩れ始めた──。以来、パニック発作は日常化した。カメラの前に立つと、必ず襲ってきた。

その頃は今のようにメンタルヘルスが一般的な関心事ではなく、私は心臓発作を起こしているのだと思った。何人もの医師に心臓を診てもらったが、はっきりしたことは分からなかった。

こうして12年が過ぎた頃、ある医師が私の病気をパニック障害だと診断してくれた。

自分の症状を表す言葉を手に入れたが、私は苦しみを隠していた。いつも笑って冗談を言う「グレイズ」というキャラクターをつくり上げ、それを演じるようになった。私がどれほどの痛みを感じているか、誰も知らなかった。

心の痛みをさらけ出せ

心の問題を周囲に明かす決意をしたのは、数年前のことだ。スーパーボウルで一緒に仕事をする友人たちに連絡を取り、彼らの前で言った。

「僕はひどい状態だ。自分が怖い。自殺はしないと思うが、毎日が最悪だ」

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東芝、26年度営業利益率10%へ 最大4000人の

ワールド

中ロ首脳会談、包括的戦略パートナーシップ深化の共同

ビジネス

ホンダ、電動化とソフトに10兆円投資 30年までに

ワールド

ロシア軍、ウクライナの全方面で前進している=ショイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中