最新記事

米台関係

米下院議長の訪台よりも、もっと「嵐を呼ぶ」蔡英文の訪米プラン浮上

2023年3月14日(火)11時15分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)
米台国旗

Stephen Lam-REUTERS

<中国からの反発を避けるため、マッカーシー米下院議長の台湾訪問を固辞したという蔡英文。しかし、その代わりにアメリカに会いにいく予定だというが...>

マッカーシー米下院議長が強い意欲を示してきた台湾訪問は、取りやめになったようだ。フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、代わりに台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が訪米してマッカーシーと会談することになったという。

同紙によると、計画変更は、中国を刺激することを避けたいと考えた蔡の意向を受けたものだという。昨年8月に当時のペロシ米下院議長が訪台したときは、反発した中国が台湾周辺で実弾演習を行った。

蔡はこの4月に、外交関係のある中米諸国を訪問する途中で立ち寄るという形でアメリカを訪ねる予定だという。蔡は過去にも2度アメリカに立ち寄っているが、来年5月の任期満了を前に、今回の訪米でどのような行動を取るか臆測を呼んでいる。

一部報道によると、蔡は母校のコーネル大学で講演を行う可能性があるらしい。コーネル大学は、1995年に当時の李登輝総統(やはり同大学出身)が訪問して、中国と台湾の政治体制の違いを強調する講演を行った場所だ。

李の講演は、95~96年の第3次台湾海峡危機を生む主たる要因の1つとなった。中国は、96年に初の直接選挙で実施された総統選で有権者の投票行動に影響を及ぼし、2期目を目指す李の勝利を阻止したいという意図もあって、台湾周辺で軍事演習を行ったのだ(中国の思惑は外れて、総統選は李の勝利に終わった)。

蔡が李の庇護の下で政治の世界に入った経緯を考えると、95年の李の訪米と今年の蔡の訪米の類似点は大きな象徴的意味を持つと言えそうだ。

しかし、蔡の意向によりマッカーシーの台湾訪問が取りやめになったとすれば、それが意味することも見落とせない。蔡としては、与党・民進党が意図的に中国を挑発しているという印象を国際社会に与えたくなかったのだろう。

マッカーシーの台湾訪問が実現していれば、来年の総統選と立法院(国会に相当)議員選で民進党が外交上の成果をアピールする材料にできたはずだが、それでも訪問を断ったのだ。2月に台湾のテレビ局TVBSが行った世論調査によると、台湾の人々の半数以上はマッカーシーの台湾訪問を支持すると答えていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中