GDPの1.5%を占める性産業の合法化で、売春大国タイはどう変わるのか?
A GLOBAL CAPITAL OF SEX WORK
コロナ禍においては医療へのアクセスも困難になった。出会い系アプリで客を見つけるにせよ、ポン引きがいるにせよ、路上に立つにせよ、セックスワーカーは健康と身の安全のリスクにさらされる。
ニューヨークに本拠を置くNPO「セックスワーカーズ・プロジェクト」によれば、性労働従事者は国を問わず45~75%の確率で仕事中に暴力を振るわれる可能性がある。アナのような売春婦は、トランスジェンダーと分かって激怒した客に暴行される危険もある。
警察に行っても「違法な仕事をしているから」助けてくれないと、アナは言う。それどころか、警察がセックスワーカーに対して恐喝を働くことも少なくない。
性産業から利益を得る警察
米コロンビア大学のロナルド・ワイツァー教授らタイ性産業の研究者たちは、警察がセックスツーリズムに深く関わっており、そこから利益を得ていると批判する。
「行政、とりわけ警察にとって、売春は違法なほうが都合がいい。賄賂を得られるからだ」と、ワイツァーは語る。
「ごく一握りだが、警察に汚職があることは確かだ」と、タイ警察のスラチェート・ハクパーン副総監は認める。セックスワークが合法化されれば、こうした汚職は減るはずだから、警察にとってもいいことだと、彼は言う。
「身内の不正を取り締まる必要がなくなり、別のことに時間と労力を費やせるようになる」
世界的に見ると、セックスワークの法的地位に関する考え方は3つある。犯罪化、合法化、非犯罪化だ。
合法化モデルは、セックスワーカーを登録して医療や社会保障を受けられるようにする。
非犯罪化モデルは、セックスワークを合法と見なすわけではないが、刑罰の対象から外す。スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国は、この2つのハイブリッドモデルを採用している。
だが世界の約半数の国は犯罪化モデルを採用しており、性労働者も客も、客引きや人身売買業者などの仲介役も刑罰の対象にする。
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