最新記事
ウクライナ情勢

誰もプーチンを擁護しないが、欧米諸国も支持しない──グローバルサウスが冷ややかに見て取る「偽善」と2つの溝

Two Splits on Ukraine

2023年3月7日(火)14時54分
スティーブン・ウォルト(国際政治学者)

次期米大統領選にも影響

表向きの楽観論と、非公式な場で聞かれる現実主義的な見解のギャップは、なんら驚くべきことではない。

戦争中の国のリーダーは明るい展望を力強く語り、国民の士気と同盟国の結束を維持する必要がある。また、自分たちは勝利できると自信を示し、何が何でも戦い抜くと断言することで、敵に目標の下方修正を強いる必要もある。たとえ交渉に応じるべき時だと思っても、それを口にすれば、交渉における自らの立場が弱くなり、希望以下の結果を招くことになる。

筆者が心配なのはこの点だ。バイデン政権のウクライナを支持する言葉は、どんどん壮大なものになっており、ハリウッド映画的なハッピーエンドを約束するようになった。

バイデンのウクライナ訪問は、彼のバイタリティーと、ウクライナを支持する決意をアピールする大胆な行動だった。だがそれは内容的にも、視覚的にも、バイデンの政治生命をこの戦争の結果に直接結び付けることになった。

もし、バイデンが約束を実現できなければ、今は説得力があるように見えるアメリカのリーダーシップが、来年には輝きを失っているだろう。

ロシアの侵攻から2年目となる2024年2月にも、戦況が膠着状態にあり、ウクライナが破壊され続けていたら、バイデンは支援を一段と強化するか、次善の策を探すプレッシャーにさらされる。これまでの壮大な約束を考えると、完全な勝利以外のものは失敗に見えてしまうだろう。

さらに、中国がロシアへの支援強化を決めたら、バイデンは世界第2位の経済大国に追加制裁を科さなければならない。それは新たなサプライチェーン問題を引き起こし、現在進んでいる経済の立て直しが危うくなる。

そうなれば、24年の米大統領選で、共和党大統領候補の座を狙う面々(そのうちの1人は特に)は、舌なめずりして喜ぶに違いない。

From Foreign Policy Magazine

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏に不満、対ロシア追加制裁を検討=トランプ

ワールド

英国王、仏大統領を国賓招待 ブレグジット後初のEU

ワールド

米財務長官、来週の訪日を計画 南アで開催のG20会

ビジネス

米消費者の1年先インフレ期待、3%に低下=NY連銀
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国空母「山東」を見る香港人の心情やいかに
  • 4
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 5
    トランプ、日本に25%の関税...交渉期限は8月1日まで…
  • 6
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 7
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 8
    【クイズ】世界で最も売上が高い「キャラクタービジ…
  • 9
    トランプ税制改革の「壊滅的影響」...富裕層への減税…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 9
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中