最新記事

エルサルバドル

地上の地獄──血まみれの土地に巨大刑務所開設、エルサルバドル

2023年3月2日(木)18時25分
佐藤太郎

移送される受刑者たち YouTube/Channel 4 News

<ブケレ大統領は、同国の他の刑務所では受刑者が、売春婦を呼んだり、プレイステーションを楽しみ、電話の使用ができる環境だと主張している。こういった行為は新たな刑務所では一切許されない>

中央アメリカ中部に位置するエルサルバドル。この国に、地上の地獄と言えそうな新しい刑務所ができた。

首都サンサルバドルの南にあるテコルカ市の農村地域に開設された「テロリスト監禁センター(CECOT)」は、アメリカ大陸において最大規模で、施設は8つの鉄筋コンクリートの建物から成る、最大で4万人を収容できる巨大刑務所だ。2月24日、最初の収容者2000人が移送された。

【写真・動画】地獄すぎる刑務所に収容されるギャングたち

収容者は逮捕されたギャング達。丸刈りにされ、上半身裸の2000人もの男性が後ろ手に手錠をかけられ、足は鎖でつながれている。収容者のアイデンティティは剥奪される。収容者100 人に対して80のベッドしかないと、英デイリーメールは報じている。

「支配」を究極のレベルに

刑務所は受刑者の生活を支配し、自由を奪うように設計されるが、CECOTはそれを究極のレベルまで引き上げている。

エルサルバドルのナイブ・ブケレ大統領は、同国の他の刑務所では受刑者が、売春婦を呼んだり、テレビ視聴、さらにプレイステーションを楽しみ、電話の使用ができてしまう環境だと主張している。こういった行為はCECOTでは、一切許されない。

外界との接触を不可能にするため、携帯電話の信号を遮断する電子スクランブラーを導入。脱走防止策として、頑丈な鋼鉄の独房、周囲を囲う壁、19の監視塔、 電気柵、パトロールエリアといった、7つの「壁」を作った。

ギャングへの強いメッセージ

エルサルバドル政府がここまで強烈な刑務所を作ったのは、国を悩ませてきた暴力的なギャング達の、暴力の応酬に終止符を打ちたいからだ。

約12年間続いた内戦は終わったものの、戦中に流出した武器が国内に大量に残されており、ギャングによる犯罪が横行している。経済状況は停滞し、貧困率も高く、治安は悪化の一途。米『グローバル・ファイナンス』が発表した「世界で最も治安の良い国ランキング」によると、エルサルバドルは105位だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、人質のイスラエル軍兵士の遺体を返還へ ガザ

ワールド

中国外相、EUは「ライバルでなくパートナー」 自由

ワールド

プーチン氏、G20サミット代表団長にオレシキン副補

ワールド

中ロ、一方的制裁への共同対応表明 習主席がロ首相と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中