最新記事

エネルギー

水素活用の未来を拓く...新たな超音波式水素流量濃度計に、ここまで期待が集まる訳

2023年3月2日(木)17時30分
西山 亨
水素電池(イメージ画像)

Petmal-iStock

<世界的なカーボンニュートラルへの取り組みにおいて、水素を活用する燃料電池への期待が高まっている。その開発を促進する高い能力を備えた超音波式水素流量濃度計を、パナソニックが発表した>

水素と酸素を化学反応させて電気と熱を発生させる燃料電池。CO2を排出しないクリーンなエネルギーとして、燃料電池車をはじめとしたさまざまな用途に使われている。純水素型燃料電池を製造するパナソニックも、カーボンニュートラル実現に向けて、この水素の活用を重要な事業として位置付けている。

その燃料電池の開発において現在、重要視されていることがある。水素と酸素を化学反応させる際に、水素は一度ですべての量が反応するわけではなく、燃料電池内では活用されなかった水素が循環し、再び反応させて無駄を減らす仕組みとなっている。ただ、水素濃度が下がっているのに循環させたままでは効率が悪くなる。

つまり追加で水素を入れる最適なタイミングを知ることこそが、水素利用の効率を最適化するうえでの課題だった。これまでは、循環する水素の状態をリアルタイムで測定することが困難であり、それが効率的な燃料電池の開発のネックの1つになっていたのだ。

水素をはじめとした気体の流量や濃度を測るにはさまざま方法があり、もともとパナソニックには30年にわたる超音波を用いた計測技術の開発実績があった。ただ問題は、燃料電池は化学反応によって水が生成されるため、循環する水素が高湿度下に置かれることだった。高湿度環境下では超音波を使っても、水素の計測を正確に行うのは困難だというのが定説だった。

燃料電池動作状態で循環水素を見える化

こうした問題を克服したのが、同社の超音波式水素流量濃度計である。特長は3点あり、1点目は高湿度下での水素の流量と濃度の同時計測が可能なこと。これによって、燃料電池を動作させた状態での循環水素の見える化を実現した。2点目は、流量と濃度に加え、センサーによる温度、圧力、湿度の常時モニタリング機能を搭載したことで、これまで流量計とは別に用意しなければならなかった濃度計や温度計などが不要となった。

230302pw_hos03.jpg

燃料電池システムならびに製品使用イメージ

そして3点目が、低流量域から高流量域に至るまで、さらには-30℃から85℃までという、幅広い条件下での高精度な計測が可能になったことである。これまでは流量域に合わせて複数の計測機器が必要であったり、低濃度や高濃度のみ計測が可能であったりと、特定の条件下でしか計測ができなかった。

3つの特長を実現できた背景には、ガスメータデバイスにおけるこれまでの開発で培った、超音波センサーや超音波の計測ロジックなどの技術が関わっているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「米国の和平案推し進める用意」、 欧

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中