最新記事

中台関係

不自然に多い、中国漁船の「うっかりケーブル切断」事故の謎

A New-Style Blockade

2023年2月28日(火)14時08分
エリザベス・ブラウ(アメリカン・エンタープライズ研究所研究員)

不釣り合いに多い事故

国際ケーブル保護委員会によると、ケーブルの損傷事故は世界で年間100~200件あり、そのうち漁船が関係する事故は50~100件。残りは建設工事などによるものだ。つまり、馬祖列島と台湾本島を結ぶケーブルの損傷事故は不釣り合いなほど多い。

しかも、従来の事故は主に、沖合に停泊して海底の砂を採取する中国の掘削船に関連して起きている。海底ケーブルの直径は17~21ミリで庭のホースくらいの太さだ。これを中国の船舶が航行しただけで、立て続けに2本を「偶然」破損させたというなら、信じられないほどの不運が重なったことになる。

中国の掘削船が台湾の海域に停泊して海底の砂を採取することは、典型的なグレーゾーンの攻撃だ。軍事攻撃ではないが、問題がないとはとても言えない。

中国船が現れるたびに台湾の沿岸警備隊が現場に赴き、退去を指示しなければならない(招かれざる客が迅速に退去するとは限らない)。

掘削に伴い海洋生物や海底が傷つけられて、海底ケーブルも頻繁に被害に遭い、馬祖列島の日常生活が損なわれ、台湾本島や世界との通信に支障を来している。

2月上旬の出来事を受けて台湾の与党・民進党は、これほど短期間に連続して破損したとなると、中国が故意にやったのだろうと非難した。今回の件は、台湾本島の通信を遮断する予行演習と捉えることもできる。

社会的コストも膨大に

現在、15本の海底ケーブルが台湾本島と世界の通信網を結んでいる。CHTは少なくとも部分的には、新たなケーブルを1本敷設して馬祖列島の接続を確保する計画で、これは海底の下に埋める。

ただし、工事が終わるのは2025年になる見込みで、それまでは予備システムの費用をCHTが負担する。今回の2本の修理費用は66万~130万ドルに上る。

このようなコストを発生させることも、グレーゾーン攻撃の一部だ。地政学的な侵略行為で企業が損失を被った場合、損害保険が支払われないこともある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独鉱工業受注、1月は予想以上に減少 生産もマイナス

ワールド

韓国、燃料価格に上限設定へ エネルギーショックから

ワールド

台湾行政院長のWBC観戦での訪日、中国が分裂主義的

ビジネス

中東情勢長期化すれば、スタグフレーションリスク=経
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 2
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 5
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 6
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 10
    最後のプリンスが「復活」する日
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中