最新記事

ウクライナ情勢

犠牲になっても、今なおロシアを美化してすがる住民たち──言語、宗教、経済...ウクライナ東部の複雑な背景とは

LIVING UNDER SIEGE

2023年2月24日(金)18時44分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

230228p30_TRP_05.jpg

シベルスクの病院裏に着弾したロシア軍のミサイル。木のそばには墓標があった(2月8日) TAKASHI OZAKI

首都キーウ(キエフ)を起点に5つの州を通り、ロシアとの国境まで続くウクライナ最長の幹線道路「M03」。戦車が列を成して走り抜ける間、一般車両は路肩に寄って停車する。

「前線の道はミリタリーファーストだからひき殺されても文句は言えない。車を降りるときは、すぐに歩道側へ逃げるんだ」と、運転席のメンバーが注意を促した。

スラビャンスクを出発して1時間、道の両脇に十数台の戦車が並び、兵士が作業をしていた。そこを抜けるとバフムートの市街地が見下ろせた。ここが最前線に配備されたウクライナ軍の路上基地のようだ。そのとき前方に立ち上る煙が見えた。

「まずい、引き返そう」と声を上げるメンバー。4キロほど先にあるロシア軍陣地から放たれたミサイルが着弾したのだ。バフムートまで2.5キロの地点で全車両がUターンすることになり、全速力で迂回路に入った。

その後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のコーディネーター、エフゲニー・トカチェフに先導されバフムートの中心部に向かった。

街のシンボルだったバフムート工業大学の校舎は昨年8月の砲撃で崩れ落ちている。市街戦に対応するため、完全武装のウクライナ兵がワゴン車の中で待機している。砲撃を警戒して、私たちは集合住宅に囲まれた中庭で支援物資の配布を始めた。

大きなペットボトルの水を受け取った女性が涙ぐんでいた。自宅が砲撃を受けたコリャ・ウガレフ(36)は腕をけがしたという。

「手が痛いので鎮痛剤を飲んでいる。暖房がないから朝は本当に寒い」と言って、ガラスが飛び散った部屋を見せてくれた。地下室で犬と暮らしているウラジミール・ムンティアン(50)は「金がないからどこへも行けない。車のバッテリーから電気を取ってしのいでいる」と話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、インドの原油購入停止「承知せず」 米印合意

ワールド

ロシア、ウクライナのエネ施設に集中攻撃 新たな3カ

ワールド

焦点:外為特会、減税財源化に3つのハードル 「ほく

ワールド

スペイン、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 8
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 9
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 10
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中