最新記事

大学受験

受験地獄はもう遠い過去......時代は「大学全入」から「大学淘汰」へ

2023年2月22日(水)10時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
大学テスト

昨年春の大学受験の不合格率はわずか1.7%だった LuckyBusiness/iStock.

<2040年には受験生の約4割が現在の難関校に入れるようになる>

今年も受験シーズンになった。少子化の影響で受験競争は緩和されているというが、昔は「受験地獄」といわれるほど競争は激しかった。

40年ほど前の1980年11月、受験勉強に疲弊した青年が金属バットで両親を殺害する事件が起きた。当時、大学受験の2浪目だったというから、最初(現役時)の受験は1979年春だったことになる。同年の大学入学志願者は63万7000人で、大学入学者は40万8000人。差し引き22万9000人(35.9%)が不合格になっていた。筆者は1995年春の受験生だが、この年の不合格率も同じくらいだった。

だが近年では、「本当か」と疑いたくなるほど不合格率は下がっている。大学入学者数を合格者数、大学入学志願者数から大学入学者数を引いた数を不合格者数とし、両者の推移をたどると<図1>のようになる。統計がとれる1965年からの変遷図だ。

data230222-chart01.png

合格者数は青色、不合格者数はオレンジ色の面で示している。赤色の線は不合格率で、両者の合算に占める不合格者のパーセンテージだ。

この不合格率が大学受験競争の激しさの指標となるが、1960年代後半と1980年代末では4割を超えていた。人数が多い団塊世代と団塊ジュニア世代が受験に挑んだためだ。観察期間の中でのピークは1990年で、入学志願者88万7000人のうち39万5000人(44.5%)が不合格になっていた。

その後、不合格率は滑り台よりも急な角度で下がり、2000年には20%、2008年には10%を割り、直近の2022年春ではわずか1.7%だ。グラフを見ても、オレンジ色の不合格者の領分はほぼ無くなっている。「大学全入時代」の視覚化と言っていい。半分近くが落ちていていた1990年代初頭の「受験地獄」の頃とは隔世の感がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中貿易協議で大きな進展とベセント長官、12日に詳

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 8
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中