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2人の人生を分けたもの──「性的対象」だったブルック・シールズとパメラ・アンダーソン

Another Wake-Up Call

2023年2月15日(水)16時12分
キャット・カーデナス

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パメラ(左)と彼女をスカウトしたマリリン・グラボウスキ(『パメラ・アンダーソン』より) COURTESY OF NETFLIX


聖母か娼婦の二者択一

そうして大人になった彼女にとって、プレイボーイ誌でポーズを取ることは自分のセクシュアリティーを取り戻す手段だった。「初めて何かから解放されたような気がした」と彼女は語る。「あそこでワイルドな女が生まれたの。別世界への扉が開いたって感じだった。これからは自分のパワーを取り戻すぞって」

だがアンダーソンにとって、モデルや女優のキャリアは鉛の翼のようなものだった。彼女に個人としての自由をもたらしたが、それに伴う悪評がずっしり重くのしかかり、決して逃れられなかった。

シールズのドキュメンタリーでは、社会がしばしば女性に人生の選択を迫ることが示される。「聖母になるか、娼婦になるか」の二者択一だ。ひとたび娼婦のレッテルを貼られた女は、男たちから性の対象と見なされて人間性を奪われる。そして同性からは白い目で見られ、裏切り者として扱われる。

アンダーソンにも、この二者択一から逃れる機会はあっただろう。しかし、あのセックスビデオが流出してからは選択肢がなくなった。

あの一件を境に、アンダーソンとシールズの人生は異なる軌道に乗せられた。シールズは高校を出てから名門プリンストン大学に進み、母親から自立し、芸能界を離れ、自分の本領を発揮するための時間と空間を手に入れた。

その後、流産と第1子の出産を経て、産後鬱病に苦しむ母親たちに代わって声を上げた。抗鬱剤の使用をトム・クルーズに非難されたときは、新聞紙上で堂々と反論した。

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