最新記事

ヘルス

毎日ウオッカを1.5リットル...重度の「依存症」だった私が救われた「瞬間」の出来事

“Alcohol Almost Killed Me”

2023年1月7日(土)14時50分
デービッド・ウィルソン(グレー・エリア・ドリンキング・コーチ)
デービッド・ウィルソン

ウィルソンは依存症から脱するには仲間の支えが不可欠だと実感した DAVID WILSON

<母の家出をきっかけに、14歳から酒に溺れた私。身も心もボロボロになった私を救ってくれたのも、同じく母だった>

私はまずまず普通の家庭で育った。父は自家製ワインを造っていたが、痛飲する姿は見たことがない。14歳のとき母が突然、家を出て行った。事前に何も聞かされていなかったからショックだった。

それまで私はおとなしい子で仲間と群れるのは苦手だったが、母がいなくなると同年代の子たちとつるんで酒を飲むようになった。飲むと強気になり、仲間に受け入れられている気がした。

その後も酒で鬱憤を晴らし続けたが、30代になって酒量が増えだした。1990年に職を求めてイングランドのサットンに移り住み、92年にカーペット職人として独立。近所の住人に誘われて地元のパブに通いだし、早飲みで鳴らすようになった。

やがてパブの向かいの店で酒を買い込み、家で1人で飲むようになった。それをきっかけに飲み方が変わった。酒量はどんどん増え、二日酔いで仕事に行くようになった。

40歳でサットン郊外のベルモントにあるしゃれたコテージに引っ越した。そこが自分の牢獄になるとは夢にも思わなかった。金曜の午後に酒を買い込み、週末は朝から晩まで飲み続けるありさま......。

ワインの飲みすぎで激太りし減量しようと思ったが、酒はやめられない。低カロリーの酒を求めてウオッカに行き着いた。そして毎日ウオッカを1.5リットル飲むようになった。

2014年に結婚。酒浸りの生活を変えなければと思った。だがいくら断酒を決意しても三日坊主で終わる。

断酒のきっかけは夢の母

18年10月、母が亡くなった。私は死にゆく母に付き添い、手を握ってみとった。その瞬間、子供の頃に母が私を捨てて去っていった恨みがスーッと消えて、「ママ、愛しているよ」と初めて言えた。

その3週間後、実にリアルな夢を見た。夢の中の母は晴れやかな顔で、「私のことは心配しないで」と告げた。

その後クリニックに行くと、「あんたは歩く心臓発作だ」と医者に言われた。血圧は186/124。体重は130キロ近くで、靴下をはくだけで息切れがした。

19年初め、友人から一緒に断酒しないかとテキストメッセージで誘われた。私は夢に現れた母のことを思い、その晩友人に会って「やってみる」と伝えた。そして19年1月7日に酒を断った。

当初は断酒会のアルコホーリクス・アノニマス(AA)の会合に出てみたがしっくりこなかったので、インスタグラムを通じて自分で依存症者のコミュニティーを探し、目に留まった会に参加した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中