最新記事

教育

補助スタッフの数は少なくないのに、日本の教員の勤務時間が減らない理由

2023年1月4日(水)11時10分
舞田敏彦(教育社会学者)
教員業務

日本の教員の業務は膨大でその内容も多岐にわたる NuxPenDekDee/iStock.

<まず膨大な量の業務を削減しなければ、補助スタッフの数を増やしても事態は変わらない>

日本の教員の過重労働を緩和するため、様々な施策が実施されている。最近の政策文書でよく見かけるのは「補助スタッフの増加」だ。教員の業務があまりに多いので、教員免許を持つ教員が行う必要がない業務、専門性を要さない雑務を分担してもらうスタッフを増やそう、というものだ。

法律の上でも2017年に学校教育法施行規則が改正され、部活動指導員というスタッフが制度化された。教員に代わり、単独で実技の指導や大会等の引率を行うことができる。また2021年の同規則改正により、教員業務支援員も新設された。読んで字のごとく教員の業務を支援するスタッフで、プリントの印刷・配布準備や採点補助等を行う。

こういう政策もあり、学校に配置される補助スタッフも増えてきている。やや古いが、2018年の国際教員調査「TALIS 2018」によると、日本の中学校の補助スタッフ(personnel for pedagogical support)1人あたりの教員数は10.3人。これを裏返すと、教員100人あたりの補助スタッフは9.7人。上記調査に参加した47カ国の平均値(10.4人)よりもわずかに少ない程度だ。この数値が高い順に、参加国・地域を並べると<表1>のようになる。

data230104-chart01.png

日本はちょうど真ん中辺りだ。教員の勤務時間がべらぼうに長い日本では、業務を分担する補助スタッフが少ないかというと、そうでもない。

補助スタッフの数が上位の国には、教員の勤務時間が短い北欧の諸国が位置している。スウェーデンの中学校教員の平均勤務時間(週)は42.3時間で、日本の56.0時間よりだいぶ短い。それならば、補助スタッフが少ない国では教員の勤務時間が長いかというと、そのようなことはない。イタリアでは教員100人あたり2.8人しか補助スタッフがいないが、教員の週の平均勤務時間は30.0時間で、日本はおろかスウェーデンよりもはるかに短い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、2040年以降も石炭利用継続 気候目標に影響

ワールド

北朝鮮ハッカー集団、韓国防衛企業狙い撃ち データ奪

ワールド

アジア、昨年は気候関連災害で世界で最も大きな被害=

ワールド

インド4月総合PMI速報値は62.2、14年ぶり高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中