最新記事

ウクライナ情勢

ドイツの最強戦車「レオパルト2」を大量供与しなければ、形勢は逆転する

Tanks, but No Tanks

2023年1月19日(木)18時30分
ジャック・デッチ

米連邦議会のある関係者は、「ウクライナ側は、バイデン政権も他の国々も戦争の現実をよく分かっていないと苛立ちを募らせている」と指摘する。

ロシアは、2022年2月に本格的な軍事侵攻を開始して以降占領したウクライナの地域の多くで防衛態勢を強化し始めている。さらに後方支援の拠点を、西側諸国がウクライナに供与したロケットシステムの射程範囲よりもずっと後方に移動させて、2022年秋にハルキウやヘルソンの占領地域をウクライナ軍に奪還された時のように、後方の拠点が攻撃を受ける失敗を繰り返すまいとしている。

ゼレンスキーや彼の顧問が不満を募らせる背景には、ウクライナに約束された軍事支援の到着がどんどん遅れてきていることと、ロシア軍による民間標的への攻撃が激化していることがある。14日には、ロシア軍がウクライナ東部ドニプロの集合住宅をミサイルで攻撃。ゼレンスキーによれば、子ども6人を含む45人が死亡したと述べた。

20日の会議に注目と期待が集まる

米バイデン政権は、地上発射型の小直径爆弾をウクライナに供給するというボーイングの提案を密かに検討している。この爆弾とロケットモーターを組み合わせることで、約150キロ先にあるロシアの標的を攻撃することが可能で、爆弾もロケットモーターもアメリカに豊富な在庫がある。

しかし米国防総省の内部には、同兵器を戦場に配備するには9カ月の準備が要るため、使えるようになるまでには戦況が一変して不必要になっているのではないか、と懸念する声がある。また東ヨーロッパ諸国の間では、NATO側が迅速に戦車や長距離兵器を供与しなければ、2回目の大規模動員令で部隊を増強したロシアに形勢挽回を許すことになりかねないと心配する。

リトアニアの元国防相リナス・リンケビチュスは18日、「20日にドイツのラムシュタインで開かれる会議で、ウクライナへの攻撃用兵器の供給について飛躍的な進展がなければ、ロシアに新たな部隊増強の時間を与えることになる」とツイートした。「そうなれば、プーチンは権力の座を維持する最後の希望を得ることになるだろう」

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中