最新記事

戦争指導者

「普段着」のゼレンスキーを無礼と非難した米保守派は、チャーチルを見よ

Zelensky's Congress Appearance Sparks Winston Churchill Comparisons

2022年12月23日(金)14時30分
ジュリア・カルボナーラ

「普段着」でも米議会のトップレディーたちにはモテモテのゼレンスキー(12月21日) Jonathan Ernst-REUTERS

<米議会に演説するのにスーツを着ないのは侮辱だ、と怒る保守派を黙らせるには、かつてゼレンスキーと同じく戦争指導者として米議会で演説したときのチャーチルの写真がいちばん?>

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12月21日、ロシアによる軍事侵攻が始まった2月以降、初めての外国訪問としてアメリカを訪問。過去10カ月ですっかりお馴染みとなったオリーブグリーンのトレーナーと同色のパンツ姿でホワイトハウスを訪れ、ジョー・バイデン大統領と会談を行った。

アメリカの保守派の有識者らは、ゼレンスキーのこの服装を厳しく批判。米連邦議会で演説を行い、首都ワシントンでバイデンと会うのだから、スーツとネクタイというもっとフォーマルな服装をすべきだったのではないかと問いかけた。

右派の有識者や保守派の評論家の多くは、ゼレンスキーが略式の軍服姿でワシントンを訪問したことについて、敬意を欠く行為だったと見なした。保守派メディア「ニュースマックス」の番組司会者であるベニー・ジョンソンは21日に投稿したツイートの中で、ゼレンスキーの服装の選択は「とてつもない侮辱」だと批判した。

右翼系メディアもと「ブライトバート」の記者であるウェンデル・ヒューズボや経済評論家のピーター・シフをはじめとするその他の者も、ゼレンスキーは空路はるばる大西洋を越えてきたが、「きちんとした服装」で登場することはできなかったと不満を表明した。

チャーチルの「サイレンスーツ」

このように、ゼレンスキーが大きな注目を集める会談に、ポッドキャストの番組を持つライターのV.F.カストロが「戦時の普段着」と称した服装で臨んだことに対して、多くの保守派は強い憤りを表明。だが一方で、ゼレンスキーの服装を、ウィンストン・チャーチル英元首相が第二次世界大戦中にホワイトハウスを訪れた際の「サイレンスーツ」になぞらえる声もあった。

あるツイッターユーザーは、「ゼレンスキーが今日、オリーブ色の略式軍服を着ていたことに腹を立てた人は、かつてウィンストン・チャーチルが防空壕用の服装でホワイトハウスを訪れたことを思い返すといい」と投稿し、1941年にチャーチルがホワイトハウスを訪れた際の歴史的な写真を共有した。

ジャーナリストのジェイコブ・ルバシキンも同じ写真を投稿し、「これが第二次世界大戦中にチャーチルがホワイトハウスを訪れた時の服装だ」と書き込んだ。

ヨーロッパで激しい戦争が繰り広げられていた1941年12月、当時イギリスの首相だったチャーチルは、実用的なミリタリー調の「つなぎ」姿でホワイトハウスを訪れた。彼が戦時中、よく身につけていた「サイレンスーツ」あるいは「ロンパースーツ(チャーチルはこちらの呼び方を好んだ)」と呼ばれるものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:司法の掌握目論むトランプ氏、側近が描く人事と

ビジネス

アングル:企業投資はドイツからフランスへ、マクロン

ワールド

原油先物、週間で2%超安 堅調な米経済指標受け

ワールド

米大統領選でトランプ氏支持、ブラックストーンCEO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    あり得ない密輸!動物87匹をテープで身体に貼り付け…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中