最新記事

ミステリー

バミューダ・トライアングルの「怪事件」は今も続いていた...最新科学で遭難の謎に迫る

Bermuda Triangle Mysteries

2022年12月21日(水)18時42分
ロビン・ホワイト(本誌自然・環境担当)

いくつかの事件は未解明だ。1918年3月には米海軍給炭艦サイクロプスが同海域を航行中、乗組員もろとも姿を消した。残骸は発見されず、原因は分からないままだ。

1881年には、アメリカ船籍の帆船エレン・オースティン号をめぐる(真偽不明の)怪事件が起きた。

ニューヨークへ向かっていたエレン・オースティン号はバミューダ海域で、乗組員の姿が見えない船に遭遇した。救難作業員を派遣したところ、船は確かに無人だったが、航行状態は完璧だった。

エレン・オースティン号の船長はこの船を伴って目的地を目指した。だが嵐で離れ離れになり、その後に無人船が目撃されることはなかった。

番組撮影中に発見された意外な「残骸」

一方、何らかの残骸が見つかった事例もある。

ヒストリーチャンネルの番組撮影中、オキーフは海洋生物学者のマイク・バーネット率いる海底探査チームと共に、NASAのスペースシャトル「チャレンジャー」の大きな破片を同海域付近で発見した。

86年に打ち上げられたチャレンジャーは発射73秒後、フロリダ州沖の高度約14キロで爆発し、搭乗員7人全員が死亡した。

「発見は衝撃だった。フライト19遭難事件と、その捜索のために派遣され、同じく消息を絶ったマーティン・マリナー飛行艇の行方を追う過程で、アメリカ史と宇宙開発計画にとって重要な発見をするとは想像もしなかった」と、オキーフは語る。

「発見された場所はバミューダ・トライアングルの外だったが、フロリダ沖から大西洋にかけての一帯には、調査すべき謎が数多く残ることを証明している」

迷信や言い伝えに反して、バミューダ・トライアングルが危険な場所であることを示す具体的な証拠は存在しない。

航空機事故などに関する情報サイト「航空安全ネットワーク」や米沿岸警備隊は長年、遭難事件の一部は同海域の荒天状況が原因ではないかと示唆してきた。それでは説明のつかない事件もあるが、船舶の安全性が十分でなかった可能性がある。つまり、バミューダ・トライアングル自体が原因ではないということだ。

「疑問の答えが見つからないとき、仮説というパンドラの箱を開けて、知的渇望や好奇心をなだめようとするのが人間だ」と、オキーフは言う。

「だからこそ、船舶や航空機の往来が盛んで原因不明の出来事が相次ぐバミューダ海域は長らく興味をそそってきた。新しい捜索方法や技術が即座に利用可能になり、いわばジグソーパズルのピースが増えた今、ようやく同海域でのあらゆる現象をより明確に捉え、よりよく理解できるようになっている」

オキーフによれば、ヒストリーチャンネルの番組の目的は、バミューダ・トライアングルに点在する数百の遭難現場の一部を特定すること。それによって「理由も分からないままに愛する者を失った遺族の一部に解決をもたらす」ことを願っている。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中