最新記事

中国

広がる感染、中国政府は「体調不良でも仕事に行け」と圧力をかけかねない

2022年12月19日(月)18時45分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)

どうやら高いようにみえる中国の感染率からは、拡散のスピードが速く、比較的軽症なオミクロン株による感染が主流であることがうかがえる。

政府が制限緩和を発表する前に、感染抑制のシステムが崩壊していた可能性も高い。

北京では制限緩和の前から、市民による感染報告があふれていた。実際には政府は既に正式な発表数よりもはるかに多くの感染者数を把握しており、ゼロコロナ政策の廃止は避けられなくなっていたのかもしれない。

今のところ、中国の医療制度は感染拡大に対応できているようだ。だが北京では救急車の出動要請が通常の6倍に増えており、病院は患者が殺到することを恐れている。

香港の著名ウイルス学者は、いずれ医療施設のスタッフも体調を崩すようになり、今の状況は長続きしないだろうと指摘している。

中国政府は、最近の「反ゼロコロナ」抗議デモによる政治的ショックと、感染急拡大の両方に動揺している可能性が高い。しかし現在は、大した対策を用意しているようにはみえない。

だからこそ当局は、「全て順調」と主張する従来のやり方に戻ったのだろう。

これから政府は国の経済成長を促すため、体調が悪くても仕事に行くよう国民に圧力をかける可能性さえある。

今のところ政府は感染者の報告数を最小限に抑え、さらに時おり新たな医療対策を打ち出すことで、今回の感染の波を乗り切ろうとしているらしい。

ワクチン接種も対策の1つだ。12月14日には、感染リスクが高い人や高齢者を対象に2回目のブースター接種を開始すると発表した。

だが、コロナによる死亡率を大きく減らすほどの人数が接種を受けられる可能性は低い。

抗ウイルス薬のパクスロビドも、依然として入手困難だ。中国本土に住む市民には、mRNAワクチンの接種を受けるため、マカオへの渡航を計画している人も少なくない。

今回の感染拡大のスピードは、ロックダウン(都市封鎖)など以前からの対策に今から引き返しても手遅れであることを示している。

仮に政府がゼロコロナ政策の復活を考えて始めており、それによって引き起こされる国民の怒りを抑え込めると考えていたとしても、現実の明らかな感染急拡大は抑制可能な段階を超えている。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の

ビジネス

アマゾン、豪データセンターに5年間で130億ドル投

ワールド

イラン世界最大級ガス田で一部生産停止、イスラエル攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中