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太田光インタビュー:「カルト擁護」と言われても......炎上に抗う真意

2022年12月13日(火)17時15分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

忘却する社会に抗う

忘却は進む、されどニュースは流れ続ける――。その時々にいくら真剣に考えても、一瞬の間に発言は消費されていく。急速に盛り上がり、急速に忘れられるメディア環境をどう捉えているのか。

太田:今でも日本社会は空気で動くものだと思っている。安倍さんが亡くなったことも、旧統一教会問題もある時期に忘れられるのではないかな。次は創価学会や他の新興宗教のほうに問題が広がっていくのかもしれない。それでも、しばらくたてば、社会の関心が離れて終わっていく気がする。俺は日本人の宗教観とか、日本社会にとって宗教とは何かという問題まで考えたいけど、問題はどうしても複雑になる。

複雑になっていくうちに「あれ? これって何が問題なんだっけ?」と多くの人がついていけなくなり、取り上げられなくなる。これがマスコミのパターンだよね。例えば去年、一昨年はあれだけ騒ぐ若者たちのせいで感染拡大が......と怒っている人がいた新型コロナなのに、今はもうサッカー・ワールドカップの日本戦の後に渋谷で騒いでいる人たちを見ても、社会的には何も言われていない。感染拡大に怒っていた人たちはどうなったんだろうと思うよ。

全ての笑いは時事ネタである

太田は、そんな現実を徹底的に笑いに変えていく。「心配ごと」があれば「笑いごと」に変えてしまえばいい、というのが彼の基本中の基本とも言えるスタンスだ。時事問題は、笑いのネタの宝庫である。太田は爆笑問題のYouTubeチャンネルで自身の炎上騒動をネタにしたコントを披露している。

太田:時事ネタをやっている以上、これは宿命なんだよね。最後は笑わないとやってられない。俺たちがネタにするくらいでちょうどいい社会問題が世の中にはいくらでもあるんですよ。日本のコメディアンは時事ネタをやっていないとか、アメリカは政治家をちゃかすけど、日本ではやっていないと言われることは多い。でも、それは嘘なんだよね。

俺の持論は、「全ての笑いは時事ネタ」である、というもの。若手のコントや漫才でも、そこに笑いが生まれるときには、現代の世相や風俗が絶対に入っている。それをちゃかしたり、ちょっとおかしいと思わせたりするから、お客さんは笑ってくれる。

炎上をネタに、までがワンセット

太田:笑いは人と人が違うからこそ生まれるもの。時事ネタも人によって受け取り方が違うでしょ。その違いの中に、おかしさがある。違いからネタが生まれるからこそ、笑いには常に人を傷つける可能性があるし、逆に人によっては救われたと受け止められる可能性もある。俺はそんなもんだと思っている。

笑いは赦(ゆる)しでもある。笑いのネタにするということは、その人を赦して次に向かっていくということ。炎上騒動を笑いのネタにするというのもそういうことだよね。まぁ俺の場合、ネタにしたらしたで、不謹慎だと言われるまでがワンセットだな。

そう言って、自らの発言する姿を相対化するかのようにウヒャヒャと笑う。その姿こそ、太田光そのものだった。きっと彼は最後まで、きっとこう信じて生きるのだろう。人間の言葉はどうせ伝わらない、だが、伝えることを諦めない、と。

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