最新記事

ロシア

ロシア産原油「甘い」とされる制裁、その背景事情──西側諸国のジレンマ

2022年12月12日(月)12時20分
クリスティーナ・ルー
ロシア産原油

BET_NOIRE/ISTOCK

<G7とEU、オーストラリアはロシア産原油の取引価格に上限を設ける追加制裁を発動した。ウクライナのゼレンスキー大統領は上限価格を「甘い」と批判。その背景には西側諸国が抱えるジレンマがある>

12月5日、G7とEU、オーストラリアはロシアへの追加制裁として、海上輸送されるロシア産原油の取引価格に1バレル=60ドルの上限を設定する措置を発動した。

ロシアの資金源を断つ狙いだが、上限価格のさらなる引き下げを訴えていたウクライナのゼレンスキー大統領は、甘い対応だと批判している。

実際、この制裁は矛盾する2つのニーズを抱えた西側諸国の妥協の産物だ。各国は原油を主要な収入源とするロシアに制裁を科したい一方で、ロシア産原油を市場に残して自国経済への打撃を和らげる必要にも迫られている。

「極めて難しい綱渡りだ」と、石油関連のコンサルティング企業エナジー・アスペクツのリチャード・ブロンズは言う。

一方、この措置に猛反発するロシアは上限を導入する国への石油供給を拒み、減産の可能性も示唆している。さらに「影の船団」と呼ばれる大量のタンカーを調達し、制裁の網をかいくぐって中国やインド、トルコへの輸出をもくろんでいるとみられる。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

参院選、自公で過半数微妙な情勢と各社報道 首相は続

ワールド

石破首相が続投の方針、「日本の将来に責任」 参院選

ワールド

石破自民との「大連立はあり得ない」=野田・立憲民主

ワールド

国民民主の玉木代表、「石破政権とは協力できず」 続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞の遺伝子に火を点ける「プルアップ」とは何か?
  • 2
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 3
    日本では「戦争が終わって80年」...来日して35年目のイラン人が、いま噛み締める「平和の意味」
  • 4
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    小さなニキビだと油断していたら...目をふさぐほど巨…
  • 10
    イギリスのパブで偶然出会った日本語ペラペラのイン…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 7
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 8
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中