最新記事

カタールW杯

イングランドに喫した「大敗」を、イラン国民が大喜び...何が起きているのか

Iranians Celebrate England Thrashing Their Team at World Cup, Video Shows

2022年11月23日(水)14時20分
ハレダ・ラーマン
カタールW杯イラン代表

イングランド戦前の国歌斉唱中のイラン代表(11月21日) Marko Djurica-Reuters

<純粋にサッカーを楽しみ、自国の代表チームを応援できる状況ではない現在のイラン。自国の敗北を喜ぶ複雑な心境とは?>

イラン代表チームが蹴散らされる姿に、イランの市民が歓喜した。11月21日、ワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグの初戦で、イランはイングランドと対戦。ドーハのハリファ国際スタジアムで行われた試合で、イングランドが試合を決定づける3点目のゴールを決めた瞬間、イランの首都テヘランのシャハラン地区で人々が歓声を挙げる様子が動画に収められた。

■【動画】イングランドのゴールの瞬間、歓声が上がったテヘランの町

ロンドンを拠点とするペルシャ語放送局、イラン・インターナショナルが、この時の様子を映した動画をツイッターに投稿した。この試合では結局、イングランドがさらに3得点を挙げ、6対2でイランに圧勝している。

なぜテヘラン市民たちは、自国の代表チームの敗北を喜んだのか。それは、代表チームがW杯で戦う一方で、イラン国内で続いている女性たちを中心とする激しい抗議デモが関係している。

今回のデモのきっかけは、22歳の女性マフサ・アミニの死だ。アミニは今年9月13日、頭髪を適切に覆っていないなどの理由でイランの道徳警察に拘束され、3日後に死亡した。

この出来事に抗議するデモが拡大すると、当局は厳しい取り締まりを開始。人権擁護団体「イランの人権活動家」によれば、治安部隊による暴力的な取り締まりで、抗議デモの死者数は既に少なくとも419人に上っている。

さらにデモ開始以来、イラン国内でのサッカー試合は当局の決定によって、全て非公開になっている。

代表チームは国民より政権寄り?

W杯の対イングランド戦の会場では、抗議デモのスローガンである「女性、生命、自由」という文字や弾圧の犠牲になったデモ参加者の名前を記したTシャツを身に着けたり、プラカードを掲げるイランサポーターの姿が見られた。

ただそうした中で、代表チームは政権寄りで、今回の抗議デモへの連帯を示してこなかったと国民からは見られているようだ。それもあって、冒頭の動画のようにチームの失点を喜ぶ声が上がったものと思われる。また動画には、歓声とともに「独裁者に死を」と唱える声も収められている。

この試合の前のセレモニーでイラン国歌が流れた際にも、サポーターらはブーイングを浴びせた。ただ、ピッチ上のイラン代表選手たちは口をつぐんだままだった。故国での抗議デモへの連帯を示すため、国歌斉唱を拒否するかどうかはチーム全員で決めると、代表選手の1人のアリレザ・ジャハンバフシュは試合に先立って語っていた。

■【動画】国歌が流れるなか口をつぐむ選手たち、客席からはブーイング

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

AI投資加速でハイパースケーラー債発行拡大へ、アマ

ワールド

タイ憲法裁、総選挙投票用紙の合法性に異議唱える申し

ワールド

米、「麻薬密輸船」攻撃で157人殺害 国防総省高官

ワールド

レバノン各地でイスラエルの空爆、首都中心部で少なく
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中