最新記事

カタールW杯

代表不在でも、奇妙な存在感を放つ中国──スポーツ外交とパンダ外交の先には?

China AWOL at World Cup

2022年11月28日(月)13時24分
ジョナサン・ホワイト

ブラジル人選手3人に中国籍を取得させ代表チームに入れたり、代表チームの強化キャンプに合わせてプロリーグの中国サッカー・スーパーリーグ(CSL)の試合スケジュールを変更するほどの熱の入れようだった。

相次ぐクラブの経営破綻

だが今年2月に行われたアジア最終予選第8戦で中国はグループ最下位のベトナムに3対1で敗れ、カタール大会出場の夢はあえなく砕け散った。

中国がベトナムに負けたのはこれが初めて。18年のロシア大会予選時と比べ、この4年間で中国チームの実力が低下したのは明らかだ。

今回の代表チームにはCSLの選手は2人しか入っていなかった。ロシア大会のときは9人だったのに、なぜこれほど減ったのか。そこに中国サッカー界に吹きすさぶ厳しい逆風がうかがえる。

CSLからは既に外国人選手が多数去っている。この「大量脱出」は新型コロナウイルスのパンデミックが起きる前から始まっていた。16年以降「5年間くらいは巨額の資金が流入し、中国サッカー界はブームに沸き返っていた」と、中国のスポーツ事情に詳しいマーク・ドライヤーは言う。

「その後突然バブルがはじけ、下部リーグだけでなく、CSLのクラブも次々に経営破綻に陥った。これほど短期間に多数のクラブが破綻するなんて、ほかの国では考えられないことだ」

CSLの20年シーズンを制した江蘇FC(旧・江蘇蘇寧)は、オーナーの電子商取引大手、蘇寧控股集団の経営状況が悪化し、タイトル獲得からわずか数カ月後の21年2月末に活動を停止した。

天津天海(旧・天津権健)は親会社の製薬会社が違法なマーケティングを行ったとして、19年にクラブの会長を務める創業者が逮捕され、20年5月に解散を発表した。

新型コロナ以前から、中国のサッカー界では選手への給与支払いの遅れなど、資金難が報じられてきた。広州FC(旧・広州恒大)を運営する不動産開発大手、中国恒大集団が21年秋に経営危機に陥ったように、多くのクラブの親会社は金欠状態だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中