最新記事

日本社会

少子化傾向が続く中でも、結婚した夫婦の出産志向は変わっていない

2022年11月2日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
双子の赤ちゃん

既婚女性の出生率はこの30年でむしろ上がっている undefined undefined/iStock.

<事実婚や未婚での子育ても支援する、多様な家族像に配慮した環境づくりが必要>

少子化の進行が止まらない。コロナ禍はそれに拍車をかけており、出生数は2019年が86万人、2020年が84万人、2021年が81万人と、ガクンガクンと減っている。戦後間もない頃、年間250万人以上の子どもが生まれていた時代とは、隔世の感がある。

だが出生率という指標を計算してみると、あまり知られていない事実が浮かび上がる。全人口ではなく、出産年齢の既婚女性をベースにした出生率だ。総務省の『国勢調査』から25〜44歳の有配偶女性の数を拾うと、1990年では1403万人、2020年では815万人。年間の出生数は順に122万人、84万人(厚労省『人口動態統計』)。割り算で出生率を出すと、以下のようになる。

▼1990年......122/1403 = 8.7%
▼2020年......84/815 = 10.3%

出産年齢の既婚女性をベースとした出生率は、この30年間で上昇している。結婚した夫婦に限って見てみると、出産志向は変わっていないようだ。国の出生数が減っているのは、出産年齢の既婚女性の絶対数が少なくなっていることによる。事態の変化を図解すると、<図1>のようになる。

data221102-chart0102.png

正方形の面積は25~44歳の女性人口を表していて、この30年間で1764万人から1386万人に減っている。未婚化により、有配偶女性の割合も減っている(横軸)。だが、有配偶女性の中での出生数の割合はほぼ同じだ。繰り返すが、既婚のカップルの出産志向は変わっていないと推測される。

それは、出生順位の統計からもうかがえる。出生児のうち第3子以降の割合は1990年では18.9%、2020年は17.8%で、大きな変化はない(厚労省『人口動態統計』)。既婚の夫婦の中では、子を何人産もうという意向も変わっていないようだ。

少子化の最大の要因は出産年齢の女性の減少だが、その次に大きいのは未婚化だ。これに歯止めをかけようと、各地の自治体は出会いの場を設けるなどして、何とか婚姻を増やそうとしているものの、あまり成果を上げていない。そういう取り組みもいいが、どういうライフスタイルを選ぼうと、子を産み育てられる環境を構築すべきではないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中