最新記事

事件

インドネシア・サッカー場の悲劇 「警察の催涙弾が主原因」と政府調査委

2022年10月17日(月)12時54分
大塚智彦
催涙弾を発射するインドネシア警察

警察の催涙弾の使用が132人の犠牲者を生んだ。Antara Foto Agency - REUTERS

<今後はスタジアムでの警備の改革が課題に>

インドネシア東ジャワ州のサッカー場で132人が死亡した事件の政府調査委員会は10月14日、ピッチに雪崩れ込んだファンなどに対し警戒に当たっていた警察による催涙弾発射が招いた混乱が原因とする調査結果をまとめ、ジョコ・ウィドド大統領に提出した。

警察はこれまでサッカースタジアムの狭く数少ない出入口が混乱を悪化させたなどとして施設上の不備を指摘するなどして、警察による催涙弾使用が混乱拡大の要因との立場を取らず、責任回避ともとれる姿勢を明らかにしていた。このため今回の政府調査委員会による調査結果に対して反論するかどうかが注目されている。

将棋倒しの下敷きで圧死多数

事件は10月1日、ジャワ島東ジャワ州マランにあるカンジュルハン・スタジアムで発生した。この日は地元マランの「アレマFC」と同州州都スラバヤの「ペルセバヤ・スラバヤ」によるサッカー1次リーグの公式戦で、人気が高く多くのファンが詰めかけた。

試合は前半同点だったが後半「ぺルセバヤ・スラバヤ」の日本人選手が「アレマFC」ゴール前の混戦からゴールを決め、これが決勝点となり勝利した。

試合後敗戦した地元チームのファンがピッチに雪崩れ込みその数は約3000人に達した。警備に当たっていた警察官や陸軍兵士とピッチのあちこちで衝突が発生、警察が警棒などでファンを打擲する様子が地元テレビで映しだされた。

ピッチを統制できないと判断した警察が催涙弾をピッチや残っていた観衆がいるスタンドなどに向かって次々に発射。催涙ガスで呼吸困難や失神、目や喉の痛みを訴えるファンが続出して、ピッチのファンは催涙ガスから逃れるために出口に殺到した。

そこで将棋倒しが発生し多くのファンが下敷きとなって圧死し、結果として132人死亡、300人以上が負傷というサッカー史上まれにみる悲劇となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

半導体への関税率、EUに「劣後しないこと」を今回の

ワールド

米政権、ハーバード大の特許権没収も 義務違反と主張

ビジネス

中国CPI、7月は前年比横ばい PPI予想より大幅

ワールド

米ロ首脳、15日にアラスカで会談 ウクライナ戦争終
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 3
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し
  • 4
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 5
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    今を時めく「韓国エンタメ」、その未来は実は暗い...…
  • 10
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中