最新記事

経済制裁

そこまでやる?紙とインク不足で製品ラベルを小さく

Russia To Shrink Expiration Date Labels in Bid to Save Money

2022年9月14日(水)16時42分
ブレンダン・コール

このラベルも小くなる?(スターバックス撤退後にできたモスクワのスターズ・コーヒー) Maxim Shemetov-REUTERS

<ウクライナへの軍事侵攻に対する欧米の経済制裁でロシア企業にはもうこんな手しか残されていない?>

ロシアの買い物客はそう遠くない将来、自分が購入しようとする食品についての情報を確認するのに苦労することになるかもしれない。ウクライナに対する軍事侵攻を非難する欧米からの経済制裁によって包装材やインクが不足しており、節約のため製品ラベルを小さくすることが提案されているのだ。

ロシア経済誌RBCの報道によれば、ロシアのビクトリア・アブラムチェンコ副首相は、ロシア産業貿易省傘下の連邦技術規則・計量庁に対し、製品ラベルに関する新たな全国基準を検討するよう指示を出した。

政府の各部署は7月22日までに、製品の生産地や消費期限など、ラベルに記載する必要のある情報に関して、政府に報告するよう求められていた。

RBCの報道によれば、この要請のきっかけは、「ウクライナにおける特別軍事作戦」の開始後に欧米が経済制裁を科してきたことにより、「包装材やインク」の不足が生じたからだという。

ロシアの食品製造・卸業者400社が加盟する団体「ルスプロドソユース」のドミトリー・ボストリコフ専務は7月にRBCに対し、製品ラベルを小さくしても、消費者に提供される情報が減ることはなく、製品情報の要件は「変わらないだろう」と述べていた。

消費者保護が置き去りに?

しかし、RBCが9月13日付けで報道したところによれば、まだ具体的な提案ではないものの、ラベル記載情報のうち、「削減される可能性のある」データとして、生産地、生産日、消費期限などが含まれるかもしれないとされている。

国際消費者協議会のドミトリー・ヤーニン代表はRBCに対し、生産地などの情報の省略は、消費者保護法に違反すると述べている。

ヤーニンは、ラベルデザインやインクの使用方法を変えればコスト削減が可能かもしれないとする一方、製造業者が新規則を悪用し、消費者保護のための情報を隠そうとする可能性があると指摘した。

ロシアの食品メーカーはどこも、欧米の経済制裁による包装材の不足に悩まされている。たとえばモスクワ郊外に東欧最大の食品包装材工場を持っていたテトラパック(スウェーデンで創業し、スイスのローザンヌに本社を置く国際企業)は、6月にロシアからの完全撤退を発表した。食品包装材の供給自体は、それ以前から減っていた。またロシアのソフトドリンクメーカーも、紙不足により粘着ラベル不足に苦しんでいる。

ラベルを小さくするためには、ロシアが主導し、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタンなどが参加するユーラシア経済連合(EAEU)でのラベル要件の変更も必要となる。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイとカンボジア、戦闘継続 トランプ氏との電話協議

ワールド

フィリピン中銀、0.25%利下げ 予想通り

ビジネス

日経平均は続落、FOMC通過で出尽くし ソフトバン

ワールド

台湾外交部高官、イスラエルを最近訪問=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中