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惨敗予定だった民主党になぜ逆転の可能性が?──泡沫すぎる共和党候補たち

AGAINST ALL ODDS

2022年9月1日(木)13時19分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

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連邦最高裁判所前で対峙する「中絶の権利」の賛成派と反対派(5月、ワシントン) ANNA MONEYMAKER/GETTY IMAGES

「民主党ブランドは輝きを失っているから、下院選や州知事選、州議会選の候補には不利な状況だ。だが上院選の候補者は党のイメージが全てではない。(実績があるか知名度が高い)候補者は党のブランドに縛られず、自身のブランドで戦える」

こうした状況は過去にもあった。10年に行われたオバマ政権下での最初の中間選挙では、共和党は下院選で民主党から63議席を奪ったが、上院選では少なくとも2議席を奪えるところを、極右の候補を立てたために民主党の過半数死守を許してしまった。

その2年後の12年の連邦議会選挙でも、共和党のミッチ・マコネル上院院内総務の言葉を借りれば「本選で勝てっこない候補者」が予備選で勝ったために、上院の過半数を奪うチャンスをつぶしてしまった。

今のところマコネルら共和党の重鎮は表向き楽観的な見通しを述べているが、世論の変化を肌身で感じる選挙スタッフの見方は違う。

「どう考えても上院は楽勝とはいかないだろう」とドーナンは言う。「(予備選で勝った)候補の一部が(本選で)壊滅的な結果をもたらしかねない」

トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めながら、トランプとたもとを分かったジョン・ボルトン率いる共和党内の一派は7月、「トランプは上院選の主要レースで共和党の勝機をつぶす」と題したプレスリリースを発表した。

トランプが上院選予備選で一部候補に肩入れしたために「共和党候補の本選での勝ち目は大幅に減った」というのだ。

ボルトンは支持者宛てのメールでも、トランプのせいで「無党派層や浮動層は(共和党に)嫌気が差している」と指摘。トランプ派の候補者は「トランプとの親密さをアピールし対抗馬にミニトランプと呼ばれるのを許せば、政治的な自殺」をすることになると警告している。

共和党は「ピエロの集まり」

共和党の候補者はトランプ以外の問題も抱えている。ジョージア州のウォーカーは隠し子が次々と明るみになり、気候変動などについて支離滅裂な発言を繰り返している。

アリゾナ州で民主党の現職マーク・ケリーに挑む36歳の実業家ブレイク・マスターズは、1月6日の議事堂襲撃はFBIのでっち上げだと主張し、第1次および第2次大戦にアメリカが参戦したことを嘆いている。

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