最新記事

米中関係

訪台計画は夏休みに合わせた、単なるペロシの政治的パフォーマンス?

What is Pelosi Thinking?

2022年8月1日(月)14時42分
マイク・チノイ(元CNN北京支局長、南カリフォルニア大学・米中研究所シニアフェロー)

NW_PRS_02-20220801.jpg

下院議長として胡錦濤国家主席(当時)と会談したペロシ(2009年、北京) ANDY WONGーPOOL/GETTY IMAGES


問題は、もしペロシが台湾訪問を断念すれば、中国の圧力によって、アメリカの台湾への関与が制限されたように見えることだ。

それは、「アメリカは衰退しつつある大国であり、世界の舞台では中国の強硬な態度が受け入れられつつある」という、中国の思い込みを補強しかねない。それはバイデンを批判する共和党に、バイデンが中国に対して弱腰だと非難する材料を与えることにもなる。

その一方で、もしペロシが中国政府の警告を無視して台湾訪問を強行すれば、新たな台湾危機の引き金を引きかねない。既にこの1年ほど、中国の軍用機が台湾のADIZ(防空識別圏)に侵入するケースが何度もあった。

中国軍機がペロシの搭乗する米軍機の台湾着陸を妨害したり、台湾に対して中国のADIZを宣言する可能性さえある。そうなれば、世界が頼りにする台湾の半導体産業のサプライチェーンが大きく乱れる恐れがある。

ある中国研究者は、ペロシが台湾訪問を強行すれば、中国政府は「前例のない対抗措置」を講じるだろうと警告している。

最も痛手を被るのは?

確かにこれまで、中国が台湾について発する壮大な脅し文句は現実にはなってこなかった。だが、米中関係が極めて悪化している今は、事態のエスカレートが手に負えなくなる危険性は否定できない。

その一方、今回のペロシの訪台をめぐる騒動は、バイデン政権の中国および台湾に対する政策が混乱している印象を一段と強くした。なにしろ大統領と下院議長、そして軍の態度が一致していない。

バイデン自身の言動も、政策が混乱しているイメージに寄与している。バイデンはここ数カ月に3度も、もし台湾が中国の軍事的な攻撃を受けた場合、アメリカは台湾を防衛すると明言して、側近が火消しに追われてきた。疑問はほかにもある。

これまで多くの問題で密接に協力してきたバイデンとペロシが、なぜ台湾訪問に関してはこれほど足並みが乱れているのか。なぜ国防総省は、台湾訪問のリスクを事前にではなく、FT紙による報道後に初めてペロシに説明したのか。

さらに、このタイミングは戦略的な判断というより、米議会の夏休みに合わせただけのように見える。

だが、中国にとって、今は5年に1度の中国共産党大会前の非常にデリケートな時期だ。この大会で、習近平(シー・チンピン)国家主席は党総書記として異例の3期目の就任を果たし、一段と強力な支配体制を築こうとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反落、デルやエヌビディアなどAI関連

ワールド

米、パレスチナ当局者へのビザ発給拒否 国連総会出席

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、月間では主要通貨に対し2%

ワールド

トランプ氏、議会承認済みの対外援助予算を撤回へ 4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中