最新記事

世界経済

インフレ加速で高まる社会不安 憂慮すべき5カ国まとめ

2022年7月30日(土)11時42分
ハイウェーで火を燃やしデモをするトラック

スリランカでは経済危機をめぐる抗議行動により政権が崩壊した。インフレの急激な進行に伴い世界各地で社会不安が高まる中、こうした例が今後続々と生じる可能性がある、とアナリストらは警告する。写真は6月、アルゼンチン中部サン・ニコラスで封鎖されたハイウェー。トラック運転手らがディーゼルの不足と価格高騰に抗議した(2022年 ロイター/Miguel Lo Bianco)

スリランカでは経済危機をめぐる抗議行動により政権が崩壊した。インフレの急激な進行に伴い世界各地で社会不安が高まる中、こうした例が今後続々と生じる可能性がある、とアナリストらは警告する。

国連によれば、ウクライナでの戦争をきっかけとする食料、燃料、肥料の価格高騰により、3月以降の3カ月間で、開発途上国の7000万人以上の住民が貧困状態に追いやられたという

より豊かな国でも家計は圧迫を感じつつある。世界経済フォーラム向けにイプソスが5月に実施した世論調査では、先進11カ国で、4人に1人が経済的困難に見舞われていることが明らかになった。

国連開発計画のアヒム・シュタイナー総裁は7月の声明で、「かつてない水準の物価上昇は、世界中の多くの人々にとって、昨日まで買えた食料が今日はもう手に入らないということを意味する」と指摘した。

スリランカでは、慢性的な外貨不足が手に負えないインフレをもたらし、物価上昇と生活必需品の不足に対する大規模な抗議行動が生じた。

英国やフランスからイランやギニアに至るまで、抗議行動やストライキの参加者は、少しでも生活コストの上昇に対応できるよう、賃上げと政府による給付金の増額を要求しており、対立と暴力が激化するリスクが高まっている。

データ分析会社ベリスクが作成する「社会不安指数」によれば、今年中に抗議行動が増加する可能性があるのは75カ国だ。

そのうち、憂慮すべき状況にある5カ国を見ていこう。

1.ハイチ

2021年7月のジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件以降、ハイチの治安は悪化している。ただでさえ緊迫していた同国の政治状況はさらなる混迷に陥っている。

犯罪組織による暴力が激化する中で、今月に入って燃料不足に抗議するデモ参加者が首都ポルトープランスの街路を封鎖した。数十人の死者が発生し、近隣の地区では食料・水の供給が途絶えた。

ハイチ国民の約半数は食料不足に陥っており、飢餓状態も悪化しつつある。インフレ率が26%に達し、物価上昇と暴力の激化により、買い物や緊急支援物資の入手のために外出することも危険になっているからだ。

島国であるハイチは穀物の70%を輸入しており、グローバルな食料・燃料市場の混乱に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去

ビジネス

「空飛ぶタクシー」の米ジョビ―、生産能力倍増へ 

ビジネス

ドイツ経済、26年は国内主導の回復に転換へ=IMK

ワールド

豪首相、ヘイトスピーチ対策強化を約束 ボンダイビー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中