最新記事

日本再発見

ドイツ・アカデミー賞監督が日本の公衆トイレで映画撮影へ

2022年6月28日(火)19時45分
青葉やまと(Pen Onlineより転載)

【THE TOKYO TOILET】 introduction video  YouTubeより

<東京・渋谷区では2020年からThe Tokyo Toiletプロジェクトが進行中。ドイツ人映画監督のヴィム・ヴェンダース氏は、これらトイレの清掃員たちを主人公とした映画を撮影する意向......>

アカデミー賞受賞経歴をもつドイツの映画監督が、日本での撮影に意欲を示している。その撮影場所は、公衆トイレだ。東京で進むトイレのリニューアル・プロジェクトが監督の興味を惹いた。

東京・渋谷区では2020年から、「The Tokyo Toilet」プロジェクトが進行中だ。 安藤忠雄氏や隈研吾氏など16名の建築家やデザイナーの力を借り、17ヶ所の公衆トイレを洗練されたデザインで順次リニューアルしている。革新的なデザインにより、公衆トイレに根強い負のイメージを払拭するねらいだ。

アカデミー賞受賞経験をもつドイツ人映画監督のヴィム・ヴェンダース氏は、このプロジェクトがもつ社会的意義に賛意を示した。来日し、これらトイレの清掃員たちを主人公とした映画を撮影する意向だ。実際にプロジェクトのトイレに赴き、具体的なシナリオの構想を練るという。今年中に撮影を敢行し、公開は来年を予定している。

敬遠されるトイレを、公園照らす行燈(あんどん)のような存在に

「The Tokyo Toilet」プロジェクトは2020年から進み、17ヶ所中すでに12ヶ所のトイレがリニューアルしている。例として、隈研吾氏デザインの有名な「鍋島松濤公園トイレ」は、木立のなか壁面を木材で覆う大胆かつ温かみのあるデザインがひときわ目を引く。

今回のプロジェクトのねらいについて、渋谷区観光協会の金山淳吾理事は豪ウエスト・オーストラリアン紙に対し、「トイレが行燈のように公園を照らし、訪れる人々にとって魅力的な公共の場が生まれることを願います」と語っている。

プロジェクトが5月に発表したリリースは、「それは、従来のイメージを刷新、日々の生活に共存するアートに昇華されており、現在日本だけでなく海外からも大きな注目を集めています」述べており、大きな反響が寄せられている模様だ。

このプロジェクトは、トイレを建てて終わりというわけではない。専用のユニフォームを着用した清掃員たちが日々赴き、清潔な状態に保っている。「このトイレがいつまでも清潔に保たれていたら、それは東京という街の心の美しさをそのまま写す鏡のようなものになる」とプロジェクトは説明している。

ヴェンダース監督が役所広司さんとタッグ

ヴィム・ヴェンダース氏は、こうした清掃員たちに注目した。プロジェクトは、「このThe Tokyo Toiletには、特別な清掃員たちがいます。365日、トイレを快適にするために働いています。彼らを主人公にしたアートフィルムを、Wim Wenders監督と、俳優の役所広司さんと制作します」と説明している。

【動画はこちら】
進行する「The Tokyo Toilet」プロジェクト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 7
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 8
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中