最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ軍反転攻勢へ 南部ヘルソン奪還に不可欠な西側兵器の追加供与

2022年6月16日(木)18時56分
破壊されたロシア軍の戦車と車両

ウクライナ南部・ヘルソン市に迫りつつあるウクライナ軍の兵士は、黒海沿岸における戦略上の要衝であるヘルソン市をもう少しで奪還できると手応えを感じている。写真は破壊されたロシア軍の戦車と車両。ミコライウで12日撮影(2022年 ロイター/Edgar Su)

ウクライナ南部・ヘルソン市に迫りつつあるウクライナ軍の兵士は、黒海沿岸における戦略上の要衝であるヘルソン市をもう少しで奪還できると手応えを感じている。

陸軍士官のセルギー氏は、ミコライウ市とヘルソン市を結ぶ高速道路沿いの塹壕で「ヘルソンまで15分で到達できる。南部の部隊は準備ができている。後は兵器の到着と命令を待つだけだ」と意気軒高に語った。

しかし、軍事アナリストによると、ウクライナ軍が大規模な反転攻勢の一環としてヘルソン市までの最後の30キロほどを本気で進軍するには、兵器と人員の大量の補給がなければ困難だ。

キーウ(キエフ)のアナリスト、オレグ・ジダーノフ氏は「すぐに実現することはあり得ない。ヘルソンのような地方主要都市の攻略は、再武装によって初めて可能になる」と指摘。現在到着している西側の兵器は、なお「大海の一滴」に過ぎないという。

戦術的勝利

ヘルソン州知事顧問のフラニ氏は今週初め、ウクライナのテレビ局に対し、ウクライナは南部において2週連続で領土を奪還し、戦術的勝利が「反転攻勢に変わりつつある」と述べた。

ウクライナ軍は数カ所で前進し、ロシアからヘルソン州の支配権を取り戻している。これまでにロシアが完全な掌握を発表しているのはヘルソン州だけだ。

そのためミコライウ市とヘルソン市では、楽観的な雰囲気が広がっている。

あるヘルソン出身の女性は、避難した西部から家族とともに前線近くに移動し、今後数週間のうちにヘルソン市か、あるいは少なくとも付近にあるいくつかの小都市が解放されるのを待っていると語った。

ミコライウの行政トップは先週、ロイターに対し、ウクライナの大規模な反撃は「時間の問題だ」と述べた。

ウクライナは、ロシア軍が占領地域から撤退して初めて和平交渉が可能になると主張しており、反撃を成功させ、穀倉地帯であるヘルソン州全土を奪還することが極めて重要だ。

道半ば

だが、部隊は前進こそしているが、前線はミコライウとヘルソンを結ぶ60キロメートルの高速道路の中間付近にとどまっている。

また、南部のウクライナ軍はこの数週間、米国から「M777」榴弾砲の配備を受けたものの今のところ数が足りず、ウクライナは依然として砲門数の面で劣勢だと当局者は話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中