最新記事

野生動物

井戸を掘って水を飲むチンパンジーが発見される

Rainforest Chimpanzees Dig Wells for Water in Fascinating, Rare Behavior

2022年6月16日(木)13時19分
ジェシカ・トムソン

ヒト以外の動物も、時に知性と創意工夫で「隠れた資源」を手に入れる(イメージ写真) guenterguni-iStock.

<熱帯雨林の乾季に新鮮な飲み水の必要に迫られたメスのチンパンジーが、地面の下に隠された水を発見するまで>

ウガンダの熱帯雨林に住むチンパンジーが、地面に井戸を掘って新鮮な飲み水を得ていることが明らかになった。学術誌『Primates(霊長類)』のウェブ版で6月6日に発表された。

熱帯雨林に住むチンパンジーで、井戸を掘る行動が観察されたのはこれが初めてだ。飲み水は一般に岩や木の空洞や溝に溜まったものが手に入れやすいが、これはヒト以外の動物が、「隠れた資源」を知性と創意工夫で入手する事例の一つだ。

今回の論文の共著者で、スコットランドにあるセントアンドリューズ大学の霊長類研究者、キャット・ホベイターによると、井戸掘り行動は通常、乾燥したサバンナに住むチンパンジーでのみ観察される行動だという。

「井戸掘りは非常に稀な行動なので、これが熱帯雨林に住む群れにも表れたことは大きな驚きだった。彼らにとって、飲み水は真の解決策を必要するほど切羽詰まった問題だったのだろう」と、ホベイターは本誌の取材に対して述べた。

群れで習得できたのは一部

ウガンダのグループの場合、井戸掘り行動は1頭の個体に始まって、その後他の個体に広がった。

2014年にこのワイビラ熱帯雨林に移ってきた若いメスの個体が、よどんだ水たまりに井戸を掘るのが繰り返し観察されるようになったのが最初だ。この水たまりは、この群れが乾期に水を得る最後の場所として使っていたもの。論文によると、このメスはこの水たまりの底に両手で小さな穴を掘り、水が染み出てくるまで約13秒間待ってから、出てきた水を飲んだという。

そのうち同じ群れの他のチンパンジーも興味津々で観察するようになり、最終的にはこのメスが掘った井戸を利用するようになった。メスが水を飲み終わった後に、直接水を飲んだり、木の葉やコケ、あるいは両方を組み合わせた道具に水を吸い込ませたりするようになったのだ。

「他の個体がこの行動を学ぶには時間がかかっている。今のところ井戸掘りを習得したのはメスたちや若い個体に限られている」と、ホベイターは言う。「若いチンパンジーは新しい行動を身につけやすい。またメスは、授乳のためにオスより水分を必要としている。そのことが、新鮮な水を手に入れるためにこの新しい技学ぶ強い動機になっていると考えられる」

「最も興味深い点の1つは、井戸掘りを発見したメスのに対する他のチンパンジーたちの反応だ。身体が大きく、順位の高いオスたちも、このメスが井戸を掘り、水を飲み終えるまでおとなしく順番を待ち、それからおもむろにその井戸を借りる。希少な資源をめぐる行動としては、非常に珍しいことだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

クック米FRB理事、インフレ抑制の進展停滞に懸念表

ワールド

トランプ氏暗殺未遂の被告に終身刑、連邦地裁が判決

ビジネス

米クアルコム、1─3月期見通しが予想下回る メモリ

ビジネス

ルネサス、米サイタイムにタイミング事業売却 約47
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 9
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中