最新記事

競馬

補欠から繰り上げ出走して優勝、気弱だった私の愛馬がなぜ栄冠をつかめたか

I Trained Rich Strike

2022年6月17日(金)16時06分
エリック・リード(競走馬の調教師)

220621p59_mtt02.jpg

愛馬リッチーこと、リッチストライク SILAS WALKE-LEXINGTON HERALD-LEADER-TRIBUNE NEWS SERVICE/GETTY IMAGES

8時59分に電話が鳴った

ほかにケンタッキーダービーの前にやった訓練と言えば、リッチーをチャーチルダウンズに連れていき、騒音や人だかり、報道陣のカメラ音に慣れさせることだった。しかし、この時点でリッチーは補欠馬で、ゼッケンは21番。出走馬20頭のうち1頭がレース前日の5月6日午前9時までに欠場を申し出れば、繰り上げ出走できるという立場だった。

6日の8時45分になっても、何の連絡もない。8時50分頃、私の情報筋が冴えない顔でやって来た。「繰り上げ出走は難しそうだ」

電話が鳴ったのは8時59分。リッチーを出場させる意思はあるかという主催者からの連絡だ。「もちろん!」という言葉をやっと口にできた。

レース当日、出走の1時間半前から準備に取り掛かった。リッチーはスタッフに引かれながら、しっかりとパドックを歩いた。流れている音楽には注意を向けず、出走馬が近くを通って観客が騒いでも気にしない。この舞台を何百回も経験したかのような振る舞いだった。

レースが始まるとリッチーは数頭と並んで走っていたが、カーブの途中で群れの中へ分け入り、見えなくなった。いま6位だ、と誰かが言った。リッチーの前にいた馬が転んだが、騎手のソニー・リオンがうまくかわして難を逃れた。「これは行けるかも!」と私は叫び、そのまま倒れ込んだ。だから私は、リッチーがフィニッシュする瞬間を見ていない。でも彼は紛れもなく、ケンタッキーダービーを制した。

優勝賞金は186万ドル。その60%以上はリッチーの力によるものだ。私の取り分はオーナーの取り分の10%だが、大変な額には違いない。

周りは私に「エリック、やったな、さすがだ」と言うが、私は大したことはしていない。家族とスタッフに感謝あるのみ。願わくば、この喜びが長く続きますように。

ニューズウィーク日本版 ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月24号(2月17日発売)は「ウクライナ戦争4年 苦境のロシア」特集。帰還兵の暴力、止まらないインフレ。国民は疲弊し、プーチンの足元も揺らぐ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゴールドマン、26年第4四半期の原油価格見通しを引

ワールド

イスラエルの中東地域所有権巡る米大使発言、中東・イ

ワールド

違法判決の米関税、24日に徴収停止 米税関当局発表

ワールド

中国、米最高裁関税判決の影響評価中 「一方的措置の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 3
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中小企業の「静かな抵抗」
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 7
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 8
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中