最新記事

軍事

日本の次期戦闘機(仮称F3)の開発パートナーが、米国から英国に変更された理由──新「日英同盟」の時代

2022年6月30日(木)17時10分
秋元千明(英国王立防衛安全保障研究所〔RUSI〕日本特別代表)

日本の次期戦闘機の概念図(防衛省発表)

<他の装備と異なり、戦闘機は「外交を体現」するもの。過去に例がないことだが、今年5月、次期戦闘機は日英の共同開発で進める方向に決まったという驚くべき報道が駆け巡った>

ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、すでに4カ月以上が経過した。ウクライナ軍は侵攻してくるロシア軍に頑強に抵抗し続けている。

ウクライナの善戦を支えている兵器の中に、英国が供与したNLAWと呼ばれる対戦車ミサイルがある。英国がスウェーデンと共同開発した兵器だ。

そのスウェーデンは5月、フィンランドとともにNATOへの加盟を決断した。後押しをしたのは英国。英国はNATO加盟の手続きが済むまでスウェーデンの安全を保障する共同宣言も発表した。条約など結ばずとも英国にとってスウェーデンはずっと前から同盟国なのである。

そして、英国にとってスウェーデンとよく似た関係の国が日本である。

日本の安全保障はもう米国一辺倒ではない

2021年9月、英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が横須賀に入港した。まさに日英の安全保障協力の深化を象徴するものだった。日本の安全保障が米国一辺倒から、複数の友好国との連携を重視する体制に変わりつつあることを明確に示すものであった(参考記事:「新・日英同盟」の始まりを告げる英空母「クイーン・エリザベス」来航が残した宿題)。

その直後、英国の世界的な軍事企業「BAEシステムズ」は日本に現地法人を設立することを発表した。日英の安全保障協力の進展を受け、日本の次期戦闘機(通称F3)の開発に参入することを強く意識していたからである。

そして、ついにそれは実現することになる。

2022年5月、日本の報道各社は一斉に、次期戦闘機の開発は日本と米国ではなく、三菱重工と英BAEシステムズが中心となって、日英による共同開発で進める方向に決まったと伝えた。

日英両政府からの公式な発表はまだないが、日本の岸信夫防衛相は記者会見で、「今年末までの合意に向けて協議しており、米国の同盟国でもある英国とは様々な協力の可能性を追求している」と述べ、英国との共同開発を示唆した。

次期戦闘機とは何か、なぜ共同開発なのか

それでは、次期戦闘機とはどのようなものなのか。

次期戦闘機は航空自衛隊が現在運用している地上攻撃などに対応する支援戦闘機、F2の後継機になるものだ。

防衛省はF2が退役を始める2035年頃から、その入れ替わりに新しい次期戦闘機の配備を始める方針で、90機を保有する計画だ。開発費は1兆5000億円。下請け、孫請けを含めると3000社の企業が開発に関わることになる。

日本の航空・防衛産業は2011年にF2の生産が終了して以来、戦闘機の生産を行っていない。そのため、最先端の航空技術を取得するためにも次期戦闘機は日本で開発、製造することが求められていた。

そうした中で、防衛省は2018年12月、中期防衛力整備計画(2019~2023)を発表し、次期戦闘機を国産にする方針を明らかにした。これはかつてF2戦闘機を米国と共同開発した際、米国側から多くの難題を突きつけられ、日本の航空・防衛産業を育成するための自由度が狭められたことへの反省でもあった。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ロシア、新宇宙ステーションの模型公開 単独で宇宙開

ビジネス

独ガス料金賦課金制度、導入なければエネルギー市場崩

ワールド

スーチー氏、汚職罪で禁錮6年 ミャンマー裁判所が判

ビジネス

独ガス料金、1家計当たり年間約500ユーロ増に 賦

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:世界が称賛する日本の暮らし

2022年8月 9日/2022年8月16日号(8/ 2発売)

治安、医療、食文化、教育、住環境......。日本人が気付かない日本の魅力

※次号は8/17(水)発売となります。

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    オタクにとって日本ほど居心地の良い国はない

  • 2

    クリミア軍用空港「攻撃成功」の真相──これで「戦局」は完全に逆転した

  • 3

    【写真】プールサイドで家族と過ごす白い水着姿のチョープラー

  • 4

    デリヘルで生計立て子供を私立の超難関校へ スーパ…

  • 5

    ロシアの進軍を止める?最強兵器「ハイマース」

  • 6

    「暗号資産」も「仮想通貨」も間違った呼び方です(…

  • 7

    超人気インド人女優が公開した家族写真 プールサイ…

  • 8

    【写真】発見された希少種と見られる甲殻類と、発見…

  • 9

    【動画】ロシア軍も押し返すハイマースのすべて

  • 10

    【動画】抜群のプロポーションも健在! ハイディ・ク…

  • 1

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ドラ「ちむどんどん」、沖縄県民が挙げた問題点とは

  • 2

    【写真】プールサイドで家族と過ごす白い水着姿のチョープラー

  • 3

    【映像】ガータースネークから幼蛇が出てくる瞬間

  • 4

    「これほど抗うつ効果が高いものは思いつかない」 世…

  • 5

    【画像】韓国のビーチに横たわる超巨大クラゲの写真

  • 6

    デリヘルで生計立て子供を私立の超難関校へ スーパ…

  • 7

    オタクにとって日本ほど居心地の良い国はない

  • 8

    台湾有事を一変させうる兵器「中国版HIMARS」とは何か

  • 9

    クリミア軍用空港「攻撃成功」の真相──これで「戦局…

  • 10

    全部で11匹、手負いのヘビが幼蛇を産む瞬間

  • 1

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリゲーター

  • 2

    【動画】黒人の子供に差別的な扱いをしたとして炎上したセサミプレイスでの動画

  • 3

    【空撮映像】シュモクザメが他のサメに襲い掛かる瞬間

  • 4

    「彼らは任務中の兵士だ」 近衛兵から大声で叱られた…

  • 5

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホット…

  • 6

    【映像】視聴者までハラハラさせる危機感皆無のおば…

  • 7

    【動画】近衛兵の馬の手綱に触れ、大声で注意されて…

  • 8

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ド…

  • 9

    【写真】プールサイドで家族と過ごす白い水着姿のチ…

  • 10

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月