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治験中のがん新療法、18人全員の腫瘍が6ヶ月で消失 専門医「前代未聞」

2022年6月15日(水)15時30分
青葉やまと

このタイプのがんはこれまで、投薬での治療が効きづらいとされてきた。ただし既存の研究により、治療薬の一種であるペムブロリズマブを転移前の早い段階で投与した場合、腫瘍が安定化や縮小、一部のケースでは消滅することが確認されている。

そこで研究者たちは今回、類似の作用をもつドスタリマブを用い、がんが転移する前の早い段階で投与した場合の効果を確認した。すると、腫瘍の安定化などが確認されたペムブロリズマブを上回り、すべての患者で腫瘍の消失に至った。

欧州のニュース専門チャンネル『ユーロニュース』はドスタリマブおよびペムブロリズマブについて、米国立がん研究所による解説をもとに、免疫機能の「ブレーキを解除」する薬だと説明している。免疫細胞の制限を解除することで、がん細胞を認識・攻撃する能力を高める。

今回の治験は小規模なものであり、効果を確定するにはさらに大規模な試験を実施する必要がある。研究者たちは治験への参加者を引き続き募っており、継続して効果を測定する方針だ。また、同様の手法をほかのがんにも適用できないか検討しており、胃がんや前立腺がん、膵臓がんなどの患者での治験を視野に入れている。

すべてのがんに適用できるわけではないものの、今回の研究により将来的に助かる命が増えるかもしれない。諦めていた身体機能も維持できるとして、喜びも広がりそうだ。

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