最新記事

日本社会

コロナ禍の失業で男性よりも女性の方が追い込まれた理由

2022年5月11日(水)09時45分
舞田敏彦(教育社会学者)
困窮する女性

母子世帯への生活保護はコロナ禍で増えるどころか減少する傾向すらある Doucefleur/iStock. 

<失業と自殺の相関関係は通常なら男性の方が強いが、コロナ禍ではそれが逆転し女性の方に強く出ている>

今年は何の行動制限もないゴールデンウィークだったが、新型コロナの感染拡大は予断を許さない状況が続いている。2020年春からのコロナ禍により、人々の暮らしは大きな打撃を被った。経済活動が停止し、失職して生活に困る人が増えた。公的扶助も不十分なために助けてもらえず、悲観して自らを殺める人も続出した。

自己責任を求める風潮が強い日本では、社会が不安定化するとこういう事態がしばしば起きる。それは、失業と自殺の時系列的相関関係で可視化できる。とりわけ男性では、両者は強く相関するのが常だ。働いて稼ぎを得ることへの期待が、大変に大きいためだろう。一般に社会変化の影響を強く受けるのは、女性より男性だ。

しかしコロナ禍以降、女性の自殺者数も大きく動いている。コロナ禍が始まる前年の2019年1月から2021年12月までの3年間の自殺者数を月単位で見ると、男性は1023~1341人、女性は433~899人という分布幅で、女性の方が大きく揺れ動いている。これが失業とどう相関しているかを見ると、これまでにない傾向になっている。<図1>は、この3年間(36カ月)のデータによる相関図だ。失業者数と自殺者数のマトリクスに、各月のドットを配置している。

data220511-chart01.jpg

失業者数と自殺者数がともに多い男性のドットは、上の方に位置しているが、両者の間に有意な相関関係はない。一方、女性の失業と自殺は係数+0.7151の強い相関関係にある。

上述のように、失業と自殺は男性で強く相関するのが常だが、コロナ禍の月単位のデータでは逆になっている。コロナ禍で失職したのは販売やサービス業の非正規雇用の女性が多く、生活に切羽詰まったシングルマザー等が多かったためかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要

ビジネス

訂正(17日配信記事)-日本株、なお魅力的な投資対

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 7

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中