最新記事

ウクライナ戦況

ロシア軍、地上戦力の3分の1を失った可能性──英国防省

Russia Likely Lost 'One Third' of Ground Force in Ukraine: UK Defense

2022年5月16日(月)17時09分
ジェイソン・レモン

無能の証明? ロシアの軍事ブロガーも呆れたドネツ川の渡河失敗現場(5月12日、ウクライナ軍発表) Ukrainian Airborne Forces Command/REUTERS

<ロシア国内の軍事ブロガーの間でも無能ぶりに厳しい声が上がり始めた>

イギリス国防省は5月15日に出した報告書の中で、ロシア軍は2月のウクライナ侵攻開始時に投入した地上戦力のうち、「3分の1」を失った可能性が高いと指摘した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに対し、一方的に大規模攻撃を仕掛けたのは2月24日のこと。国際社会からはすぐに批判と反発が巻き起こった。プーチンは当初、短期間の内にウクライナの領土の大半を占領し、同国政府を転覆させることができると考えていたと伝えられるが、ロシア軍は大都市一つもろくに占領できずにいるし、主な目標もほぼ達成できないままだ。

「ロシアは2月に投入した地上戦闘兵力の3分の1を失った可能性が高い」と英国防省はツイッターに投稿した。

「ロシア軍は支援能力の低下や低迷する士気、戦闘効率の低下に苦しんでいる。こうした能力の多くは交代や立て直しですぐに対応するわけにはいかず、今後もウクライナにおけるロシア軍の作戦の足を引っ張り続けるだろう」と報告書には書かれている。

侵攻直後の失敗を受け、ロシアは3月下旬に戦略を変更、ウクライナ東部のドンバス地方に戦力を集中した。だがそれでも、目標の達成は難しいことが明らかになっている。

失敗を認めないロシア

「ロシアのドンバス攻勢は勢いを失い、予定からも大きく遅れている。当初こそ小規模な前進が見られたが、ロシアはこの1カ月、占領地域の実質的な拡大を達成できていないし、一方で高水準の(兵力の)減少が続いている」と、英国防省は分析している。

現地を知る軍事アナリストや国際ジャーナリストたちの目にはロシア軍が大きな損失を被り、後退していることは明白だ。ところがロシア政府は、目標は達成しており、ウクライナ制圧をあきらめることはないと主張し続けている。

「断固として言うが、(ロシアの)降伏はありえないと確信している。少なくともここで働いているロシアの外交官はそう信じている」と、駐米ロシア大使のアナトリー・アントノフはテレビ局の取材に対して語ったと、ロシア国営タス通信は14日伝えた。

「われわれは最高司令官(プーチン大統領のこと)が軍に対して設定した全ての目標が完全に達成されると確信している。われわれは決してあきらめないし、後戻りもしない」とアントノフは述べたという。

アメリカのシンクタンク、軍事研究所は14日に発表した報告書の中で、ロシア国内で今回の侵攻を注意深く見守っている人たちの間でも軍の失敗への懸念が高まっているようだと指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協

ワールド

トランプ氏、民主6議員を「反逆者」と非難 軍に違法

ビジネス

米9月中古住宅販売、1.2%増の410万戸 住宅金

ワールド

中ロ、ミサイル防衛と「戦略安定」巡り協議 協力強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中