最新記事

ウクライナ

ロシア軍撤退後の民家から、地雷など、帰還後の住民をねらった罠が発見されている

2022年4月18日(月)15時30分
青葉やまと

ウクライナの商店を強奪するロシア兵 YouTube

<首都キーウ近郊が占領から解放され、ウクライナの人々は5週間ぶりに我が家へ。だが、数週間居座ったとみられるロシア兵によって、家は無残に荒らされ爆薬さえ仕掛けられていた>

ロシア軍が撤退した地域の民家から、地雷や仕掛け線など、帰還後の住民をねらった罠が発見されている。デニス・モナスティルスキー内相は地元TV局に対し、「占領者は、宿泊したあらゆる家に仕掛け線を残した可能性があります」と述べた。英タイムズ紙などが報じた。

仕掛け線とは、見えにくいワイヤーを地面すれすれに張ったものだ。気づかずに踏むなどして衝撃を加えると、結び付けられた爆発物が作動する。民家の玄関前の階段やフェンスなどから仕掛け線がみつかっており、帰宅した避難民をねらった罠とみられる。

モナスティルスキー内相は、なかには洗濯機に罠が張られており、使用時に爆弾が作動するよう細工されていた例もあったと明かしている。仏メディアの『ユーラクティブ』は、「不幸なことに、自宅周辺あるいは宅内の冷蔵庫や洗濯機などに設置された爆薬と地雷により、命を落とす人々が後を絶たない」と報じた。

英サン紙も、「即席で作られた爆弾」が「玄関口、洗濯機、車の窓、そして病院のベッドの下からさえも」発見されたと伝えている。

警察・軍関係者の私宅にもトラップ

警官や救助隊員、軍関係者が住む民家やマンションなどは、とくに集中的にねらわれた。ウクライナのニュースメディア『ウクインフォーム』は、略奪行為中に住人の職業を推測したのではないかとみている。

ロシア兵たちはウクライナの民家に無断で滞在し、略奪目的で住人の私物を物色している。所有物から警察や軍などの関係者だと確証した際、こうした人物をねらい撃ちにする罠を残した模様だ。

内相は、車にも罠が張られているとして注意を促した。「17歳の青年が車内で焼け死んでいた車もあります。(火の勢いが強く)骨しか残されていませんでした。ほか、女性の頭部が吹き飛ばされました。さらに別の男性も焼死し、車で倒れていました。」 車のトランクに地雷が仕掛けられており、開けようとした男性が爆風を受け死亡する例も出ている。

ゼレンスキー大統領は4月12日の演説で、住民に対し警戒を呼びかけた。現在、日に数千個のペースで危険物が発見され、除去あるいは安全な場所で意図的に起爆するなどの方法で処理が進められている。ロシア軍撤退後のキーウ北部地域には、不発弾なども含めると「数十万個か、少なくとも数万個の危険物」が残されているとゼレンスキー氏は見積もっている。

「おもてなしに感謝」 民家で強奪尽くす

ロシア軍の置き土産は、生命を脅かす地雷など爆発物だけに留まらない。押し入られた民家は好き放題に荒らされ、あらゆる家財と食品が好き放題に使われていた。

我が家に戻った家主を迎えるのは、食べかけの食材と軍用食が散乱するテーブル、物色の末に床が見えないほどに荒らされた部屋、汚物まみれのトイレ、そして衣類が引きずり出されたクローゼットなどだ。子供部屋すら、金目の物品を探し回ったあとの無残な姿をさらしている。

鏡には、家主への書き置きが残されていた。「おもてなしに感謝」「散らかしてごめんね」。軍のシンボルである「Z」「V」の記号入りだ。


ロシア軍は、ジュエリー、香水、ワインなど、金目のものは躊躇なく持ち去る。略奪を受けたある市民は、ウクインフォームの取材に対してこう語った。「奴らはすべてを奪い尽くした。家から家へと押し入り、女性の下着でさえ持ち去った。教えてくれ。奴らは下着をもっていないとでもいうのか。」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EU、ロシア産LNG積み替え禁止など協議 新たな制

ビジネス

韓国外貨準備、4月は19カ月ぶり大幅減少 介入で

ビジネス

テスラがソフトウエアやサービスなどの部門でレイオフ

ワールド

ヨルダン国王、イスラエルのラファ侵攻回避訴え 米大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中