最新記事

ウクライナ

チェルノブイリで塹壕を掘っていたロシア兵が病院に搬送された──ウクライナ情報

Russian Troops Sickened by Contaminated Chernobyl Soil: Official

2022年4月1日(金)17時13分
ブレンダン・コール
チェルノブイリ

Ondrej Bucek-iStock

<チェルノブイリ原発の周辺で土を掘り返していたロシア軍部隊が病院に救急搬送されたと、ウクライナ側が発表。「急性放射線症候群」との報道も>

ウクライナに侵攻したロシア軍によって制圧されたチョルノービリ(ロシア語由来の読み方ではチェルノブイリ)だが、この世界最悪の原発事故の現場周辺で塹壕(ざんごう)を掘っていたロシアの部隊が、その作業後に入院することになったという。ウクライナの当局者がSNSで明かした。

ウクライナ立入禁止区域管理庁のヤロスラフ・エメリアネンコ委員はフェイスブックの投稿で、ロシアの「テロリストたち」が、立入禁止区域内にある「赤い森」を掘り返していたと述べている。赤い森という名前は、1986年4月26日の事故で核汚染されて枯死した木々が赤茶色になったことから付けられたものだ。

兵士たちは、赤い森の土を掘ったことで「急性放射線症候群」になった可能性があるという報道もあり、ツイッターでは、原子力専門家による議論が巻き起こっている。いずれにせよこの主張は、ウクライナ侵攻に巻き込まれた原子力発電所への懸念を改めて浮き彫りにすることとなった。

エメリアネンコによれば、ロシアの部隊は、ベラルーシのホメリにある共和国放射線医療人間生態学研究実践センターに搬送されたという。

無謀な行動で放射線に被ばくした可能性

エメリアネンコは、部隊を輸送していると見られる車両の画像の横に、「指揮官や兵士に、最低限の知性があれば、このような結果は避けられたはずだ」と書いている。「このセンターには、ロシアの兵士たちが定期的に連れて来られている」

エメリアネンコの投稿には書かれていないが、ウクライナや欧米諸国では、搬送された兵士たちは「急性放射線症候群」になったとの報道がなされている。

環境に関するデータを提供する団体セーフキャストは、手持ちのデータを根拠に、ロシア軍は「無謀な行動により、赤い森で顕著な量の放射線に被ばくした」可能性があるが、「急性放射線症候群になるほどの量ではない」と分析する。

原子力エネルギーに関する助言を行っているラディアント・エナジー・ファンドの創設者マーク・ネルソンは、本誌の取材に対し、放射性崩壊が36年にわたって続いているため、土壌をかく乱すれば、占領軍の被ばく量は増えるかもしれないが、「集団で急性放射線症候群になるとは考えにくい」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米中貿易巡る懸念が緩和

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、米中貿易戦争巡る懸念和らぐ

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、米中貿易戦争巡る懸念和らぐ

ビジネス

米労働市場にリスク、一段の利下げ正当化=フィラデル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中