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ロシア大富豪のヨットはシースルーのプール付で1艇で716億円 今は制裁逃れでモルディブ沖に身を隠す

2022年4月11日(月)17時33分
ロシアの大富豪アンドレイ・メルニチェンコのスーパーヨット「モーターヨットA」

石炭と肥料の生産で巨額の富を築いたアンドレイ・メルニチェンコ氏の名が、3月9日にEUによる制裁対象者のリストに載った。翌日、同氏のスーパーヨット「モーターヨットA」がモルディブ領海で位置情報の発信を停止した。写真は2017年5月にモナコで撮影した、同氏所有のモーターヨットA。こちらは建造費350億円(2022年 ロイター/Stefano Rellandini)

3月9日、石炭と肥料の生産で巨額の富を築いたアンドレイ・メルニチェンコ氏の名が、欧州連合(EU)による制裁対象者のリストに載った。翌日、同氏のスーパーヨット「モーターヨットA」がモルディブ領海で位置情報の発信を停止した。

その4日後、イタリアでは当局がメルニチェンコ氏の別の船舶「セーリングヨットA」を差し押さえた。世界最大の帆走ヨットであり、イタリアの金融監督当局は、5億7800万ドル(約716億円)相当と推定している。

当局が船舶の位置追跡に使っている機器の電源を切れば、監視の目から逃れやすくなる。

だがモルディブでは、制裁対象であるロシア新興財閥(オリガルヒ)の資産に対して何らかのアクションが起こされる可能性は、いずれにせよ低い。モルディブ政府閣僚や外交官、スーパーヨット関連産業の専門家など、ロシア系資産に対する米国と欧州の制裁への対応をめぐる同国内の議論に詳しい10数人へのインタビューから明らかになった。

2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻への対応として西側諸国が一部のオリガルヒに対して制裁を科して以来、インドの南西に位置する島しょ国モルディブには、ロシア系のヨットが6隻来航。メルニチェンコ氏のヨットもそのうちの1隻だ。局が制裁に慎重なアプローチをとっているため、ヨットを所有するロシアのオリガルヒにとってモルディブは魅力的な避難先として浮上している。

船舶追跡サイト「マリントラフィック」によれば、6隻のうち3隻は現在位置をはっきりと示さず、申告されていた行き先を変更するか国際水域に入っている。

モルディブのフセイン・シャミーム主任検察官はインタビューに対し、同国の法制はそこまで厳格ではなく、ヨットの差し押さえは「現実離れ」している、と話す。国内法のもとで犯罪が生じていない限り、モルディブに来航する船舶を当局が簡単に差し押さえる訳にはいかない、というのが同氏の説明だ。

メルニチェンコ氏の広報担当者は先月のロイターの取材に対し、同氏は制裁に異議を唱えるだろうと語り、同氏のプーチン政権とのつながりはまったくないとも付け加えた。

建造企業が公開した写真を見ると、全長119メートルの「モーターヨットA」はクリスタル製の家具や3つのプールを備えており、ヨット専門誌によれば評価額は3億ドル。メルニチェンコ氏の妻は、内装デザインには自身も関与したと発言している。

メルニチェンコ氏の広報担当者は2017年、BBCへの声明で、この帆走ヨットが同氏の所有であることを認めている。どちらもフランスの有名なデザイナー、フィリップ・スタルク氏のスタイリングによるものだ。

安全な避難場所

モルティブの状況は、複数の国が依然として安全な資産逃避先を提供している現状で、西側諸国が対ロシア制裁の対象となったオリガルヒの資産を締め上げことの難しさを浮き彫りにしている。

米国、英国とEUは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けてロシアのプーチン大統領や国会議員、ビジネスマンらを対象とする広範な制裁を導入した。ロシア政府は、今回の侵攻をウクライナの「非武装化」と「非ナチ化」を目指す特別軍事作戦と称している。

欧州諸国では別荘や船舶などの資産の差し押さえが実施され、当局は、制裁対象とされた数十人のオリガルヒが所有する船舶を少なくとも6隻差し押さえている。

欧州委員会のピーター・スタノ広報官は、制裁はEU加盟国以外やモルディブなど非同盟諸国に対する拘束力を持つものではないものの、全ての国に制裁への参加を呼びかけていると話す。

モルディブは国連総会のウクライナ侵攻非難決議に賛成し、ロシアの制裁対象者に対する国際的な取り組みを支持すると表明している。

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