最新記事

オルガルヒ

ロシア大富豪のヨットはシースルーのプール付で1艇で716億円 今は制裁逃れでモルディブ沖に身を隠す

2022年4月11日(月)17時33分

だがモルディブ当局者は、現実には、ロシア富裕層が島に来なくなることによる経済的な影響が心配だと話している。

白砂のビーチと1200近い島々(多くは無人島)を持つモルディブは、超富裕層お気に入りのリゾート地だ。

マグロとココナツ以外にこれといった天然資源のない離島にすぎなかったモルディブは、観光業によってこの30年で中所得国にまで浮上してきた。コロナ禍以前の国民1人あたりGDPは1万ドルを超えており、南アジアでは最も高い。

56億ドルのGDPのうち、約3分の1は観光業によるものだ。モルディブ観光省のデータによれば、ロシア人観光客の支出は平均より高く、ウクライナ侵攻前の最後の月となった1月の入域者数ではロシア人が断トツの首位だった。

アブドゥラ・マウスーム観光相によれば、その後、ロシアからの入域者は70%減少した。同観光相は、回復を願っているという。

「我が国の入国政策は非常に開放的だ。モルディブはオープンな国だ」とマウスーム観光相は言う。

「誰にも手は出せない」

アブドゥル・ハナン氏は、ロシア人顧客を含む船舶オーナーに燃料や食料を供給する「シール・スーパーヨット・モルディブ」の経営者だ。

ハナン氏によれば、ヨットの維持費は週に何十万ドルもかかるのが普通で、顧客の約半分はロシア人だという。他のスーパーヨットのオーナーと同様、ロシア人顧客も冬をインド洋で、夏を欧州で過ごすことが多い、と同氏は言う。

ハナン氏は、制裁が発表されて以降、スーパーヨットで航海中のロシア人オーナー数人に会ったと言う。彼らは困難な時期を味わっている「控えめで普通の人々」だとしつつ、このオーナーたちが制裁対象者かどうかについては触れなかった。

ロシア人オーナーたちは、当面ヨットを国際水域に留めておこうとしており、数カ月単位でそうした水域に留まることは可能だとハナン氏は話す。

「そうすれば、誰も彼らのヨットに手を出せない」

モルディブ領海内の船舶の航行を監視しているモルディブ税関の広報担当者に現在領海内にいるロシア人オーナーのヨットの数について問い合わせたが、回答は得られなかった。

中国との綱引きも

モルディブの国際金融取引に詳しい当局者は、米国財務省から「ロシア関連資産の差し押さえを怠れば米国の金融市場へのアクセスに影響が出る」という警告があれば、モルディブ側としては無視することは難しいとしつつ、今のところそうしたメッセージは送られていないと語る。

米国でオリガルヒの資産凍結を担当するタスクフォースを率いるアンドリュー・アダムズ氏に、モルディブなどの資産逃避先について尋ねたところ、たとえオリガルヒが秘密を保持できそうな国にヨットや自家用機、その他の資産を隠そうと試みるとしても、米国政府は「過去に類を見ないほどの」協力を得ている、との回答があった。

だが、西側諸国の外交官2人は「政治的に不安定で財政面でも制約のあるモルディブに対し、制裁に関して難しい選択を迫れば、中国への接近という結果につながる可能性もある」と指摘する。モルディブの前政権は中国政府との関係を強化したが、このところは西側諸国及びインドとの関係が改善しつつある。

外交官のうち1人は、モルディブが対ロ制裁に関して妥協しなかった場合、「(同国にとって)経済的なリスクが伴うことを我々は認識している」と述べた。

(Alasdair Pal記者、Mohamed Junayd記者 翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-「安全の保証」巡り首脳レベルの協議望む=ウク

ビジネス

訂正米PCE価格、7月前年比+2.6% コアは5カ

ワールド

トランプ氏のFRB理事解任巡る審理開始、裁判所判断

ワールド

プーチン氏、トランプ氏欺くことに 露ウ会談約束しな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中