最新記事

歴史

1500人の女性を囲い17人に子ども54人を産ませた「好色将軍」徳川家斉が実子を増やし続けた理由とは

2022年4月22日(金)17時27分
河合 敦(歴史研究家・歴史作家) *PRESIDENT Onlineからの転載
江戸幕府11代将軍の徳川家斉

江戸幕府11代将軍の徳川家斉 写真=CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons


江戸幕府11代将軍の徳川家斉は、多くの側室を持ち54人の子を産ませている。歴史研究家の河合敦さんは「大奥には約1500人を囲い、『歴代将軍で最も好色だった』といわれている。しかし、そこまで子をもうけたのには、別の狙いがあったようだ」という――。

※本稿は、河合敦『徳川15代将軍 解体新書』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

11代将軍・家斉の父は徳川吉宗の孫、母は大奥の奥女中

11代将軍・徳川家斉は、御三卿の一橋家から徳川宗家を継いだ人物である。9歳のときに10代将軍・家治の養子となり、15歳で将軍の地位についた。

その実父は、吉宗の孫・一橋治済、母は岩本正利の娘・お富の方で、彼女は治済の側室である。岩本氏は吉宗の時代に紀伊藩士から幕臣に取り立てられた家柄で、お富の方は大奥の奥女中だったが、治済が見初めて将軍・家治に頼んで自身の側室にしたといわれる。

家斉の誕生については、奇瑞(きずい)が報告されている。一橋邸の御産小屋で生まれるとき、にわかに室内が明るく照らされ、鶴が屋上を悠々と舞い、やがて庭に降り立ったというのだ。人びとは「なんとめでたいことだろう」といい合ったが、のちに将軍になったというので、「なるほどやはり」と納得したそうだ。

しかし、偉人の生誕によく付会される吉兆のたぐいであり、もちろん史実とは思えない。

頻繁に宴会を開く酒好きの将軍

家斉は酒宴が好きで、「雪月花の折々又五節(五節句)などには御宴をひらかれ。近習の人人召つどへて。折ふしの興を催し給ふ」(『徳川実紀』)とあるように、頻繁に宴会を開いていた。

壮年までは浴びるように酒を飲んでいたが、ほとんど酔うことはなかったといい、晩年は3献以上を飲まないようにしていたともいう。

ともあれ、宴会好きで女好きという自堕落な印象があるものの、毎朝早く起き、かなり規則正しい生活を送っている。

今でいう「ポロ」の腕前は群を抜いていた

運動神経もよく、乗馬が趣味だった。毎年冬には吹上の馬場に良馬で有名な南部仙台の馬を集め、家臣たちが乗るのをみて、自らよい馬を選んで札をつけるなど、馬の目利きにも長けていた。

また、馬術の奥義を究めたとされる。とくに打毬(だきゅう)を好んだ。これは、馬に乗って杖(スティック)を使い毬(ボール)を門(ゴール)へ投げ入れるポロに似た競技である。

将軍・吉宗が復活させたものだが、家斉は五十三間もある馬場で打毬をおこなったさい、馬場の端にある毬門に正確に毬を投入したという。近習も老臣も家斉の腕にかなう者はいなかった。

馬、鷹狩り...趣味にはとことんのめり込む

鷹狩りも好きだった。祖父吉宗が好んだと知り、幼いころから鷹狩りをしたと『徳川実紀』にあるが、おそらく補佐役の定信が家斉を文武両道の名君にしようとして勧めたのだろう。

だが、馬と同様、非常に熱を上げ、成人してのちも鷹狩りを頻繁におこない、厳冬期の風雪を冒してまで鶴などを狩った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

赤沢再生相が訪米延期、確認事項発生 早ければ来週視

ビジネス

エヌビディア、売上高見通しが予想上回る 中国巡る不

ワールド

攻撃受けたイラン核施設で解体作業、活動隠滅の可能性

ワールド

独仏ポーランド首脳がモルドバ訪問、議会選控え親EU
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 7
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中