「1回の攻撃で奪う」 ロシアの「失敗」に学び、中国の侵攻作戦はどう変わった?
CHINA IS WATCHING
クレムリンに習近平を迎えたプーチン(2017年) SERGEI ILNITSKY-POOL-REUTERS
<予想外の抵抗を続けるウクライナの軍と国民に、ロシアは大苦戦。悲願である台湾の「統一」を目指す中国の習近平は、この教訓から何を学ぶのか>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が国境付近に展開する19万人の兵士に出撃を命じ、ウクライナ侵攻の幕が切って落とされた2月24日未明、西側世界には激震が走った。その揺れは約8000キロ東にも伝わり、台湾の運命がにわかに注目されることになった。
中国大陸の東岸沖に浮かぶ島、台湾。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は軍事力にものをいわせてでもこの島を併合し、中国共産党の悲願である「祖国統一」を実現させる気なのか。そうなれば、米中の「新冷戦」はすぐさま「熱い戦争」に発展しかねない。
中国は今、ウクライナ情勢を注視している。ウクライナ軍の強固な抵抗に遭い、想定外の苦戦を強いられるロシア軍の姿は、中国指導部に苦い教訓を与えたはずだ。
ほころびを見せていた西側諸国の結束がロシアの侵攻を受けて一気に固まったのも予想外の展開だった。西側が一丸となって打ち出した制裁はロシア経済をじわじわ締め上げている。ロシアが被る膨大な経済的・人的損失を目の当たりにすれば、台湾併合に対する中国の損得勘定も変わるはずだと、米政府はみている。
ロシア軍の侵攻開始の3日前、ロシアの国営テレビは1時間に及ぶプーチンのビデオ演説を放送した。その中でプーチンは、ウクライナはロシアの「歴史的領土」であり、ウクライナ人はアメリカの後ろ盾を得たネオナチ政権の「人質」になっていると論じている。この主張は中国の台湾に対する主張と重なり合う。
台湾の住民は「過激な分離派」の人質?
中国の指導者たちも長年、同種の論法で台湾併合を正当化してきた。台湾の人々は「台湾人」であることに誇りを持ち、自由で民主的な社会で暮らしたいと思っているのだが、中国政府に言わせると台湾の2350万人の住民は米政府に支援された過激な分離主義一派によって本土から引き離された「政治的な人質」だ。
プーチンはネオナチの支配下で苦しんでいるウクライナ人を解放するために軍隊を差し向けるのだと語って、国民を納得させようとした。ロシア兵は花束を抱えたウクライナ人に笑顔で迎えられるだろう、と。
中国指導部も祖国統一は台湾同胞も含めた中華民族の「共通の悲願」だと主張している。彼らが本気でそう信じているかは不明だが、偉大な国家を再興させるには台湾併合を成し遂げねばならぬと執拗かつかたくなに思い込んでいることは確かだ。
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