最新記事

ウクライナ

「外国人義勇兵」がロシアの捕虜になったら...そのあまりに過酷な運命

Ukraine’s Foreign Fighters

2022年3月22日(火)17時07分
デービッド・マレット(アメリカン大学准教授)

過去にロシアが外国人義勇兵に示した姿勢から考えると、捕らえられた戦闘員にとってこの方針は実に厳しいものになる。チェチェン紛争の際にロシアは、テロリスト側についた疑いのある外国人は見つけ次第、殺害すると表明した。現に04年、カナダ人の映画関係者が殺された。ロシア政府によれば、この人物は反乱勢力に爆発物の使い方を教えていたという。

ロシアは3月13日、ポーランドとの国境地帯にあるウクライナの軍事施設をミサイルで攻撃した。その理由は「西側の傭兵の訓練施設」だったためとされている。

こうしたロシアの姿勢は、大きな問題につながりかねない。外国人兵士の法的地位の問題だけでなく、彼らが処刑されたり虐待を受けた場合に出身国の政府や国民がどう反応するかという問題が浮上するからだ。

この問題は現代史に常に付きまとってきた。安全保障の専門家は、外国人義勇兵を正規の外国人部隊とは異なる存在として定義する。多くの義勇兵は正規軍に入らず、ゲリラや民兵と共に戦うからだ。

外国人義勇兵の定義が正規軍に迎えられる傭兵と別のものになるのは、彼らが国家に雇われず、金のために戦っていない場合が多いことによる。例えば過激派組織「イスラム国」(IS)のために活動する自爆犯がそうだ。

外国人兵士は何世紀も前から紛争に付き物

細かな定義からすれば、今回の紛争で傭兵と呼べるのは、ウクライナ東部のドンバス地方で親ロシア派の分離独立主義者と共に戦う一部の外国人兵士だけだろう。しかし外国人兵士が受ける過酷な扱いとそれに対する反発は、貴重な教訓となる。ウクライナの戦場や街中で捕らえられた兵士に対するロシアの扱いが、対立する国々の決意を高め、戦争へと駆り立てていくことになりかねないからだ。

外国人兵士は何世紀も前から、紛争に付き物だった。1836年、当時メキシコ領のテキサスで、独立派が約2000人の外国人義勇兵に助けられて反乱を起こした。メキシコ大統領だったアントニオ・ロペス・デ・サンタ・アナは今のロシアのウラジーミル・プーチン大統領と同様に、敵を非合法の存在と見なし、外国人をすぐさま処刑した。

だが「アラモの戦い」のような熾烈な戦闘の後、メキシコが欧米人捕虜を大量処刑したことで、アメリカをはじめ他の国々でもテキサスの独立を支持する世論が沸き起こった。復讐に燃える義勇兵が続々と戦場に押し掛け、メキシコによるテキサスの支配を終わらせた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ

ワールド

ネタニヤフ氏、イランの体制崩壊も視野 「脅威取り除

ワールド

トランプ氏、イスラエルとイランの停戦合意を期待

ビジネス

仏ルノーCEOが退任へ、グッチ所有企業のトップに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中