最新記事

ウクライナ

「外国人義勇兵」がロシアの捕虜になったら...そのあまりに過酷な運命

Ukraine’s Foreign Fighters

2022年3月22日(火)17時07分
デービッド・マレット(アメリカン大学准教授)
イギリス出身の義勇兵

ロシア軍と戦うためにウクライナ西部のリビウの駅に集合し、東部の前線に向かうイギリス出身の義勇兵たち KAI PFAFFENBACHーREUTERS

<ウクライナのゼレンスキー大統領の呼び掛けに、52カ国から2万人が応募したという。ただし彼らは戦場で、国際法に守られるとは限らない>

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2月27日、外国人兵士の部隊を編成すると発表した。名称は「ウクライナ領土防衛部隊外国人軍団」。既にロシア軍と戦うために入国している義勇兵に加え、ネット上で新規入隊を募るという趣旨だった。10日後、52カ国から約2万人の応募があったと発表された。

しかし自らの意思で戦いに参加した外国人が犠牲になったり捕虜にされたら、いったい彼らはどうなるのか。ウクライナが外国人義勇兵を正規軍の一部として採用するのなら、ジュネーブ条約で兵士に認められている権利を全て持つべきだということになる。実際にウクライナは2010年代、親ロシア派勢力と戦う民兵隊に参加した外国人をそのように扱っていた。

国際法の下では、兵士が負傷したり捕虜にされるなどして戦闘外に置かれたときには、報復や拷問、屈辱的な扱いから保護されることが求められている。また母国の行為について連座して罰を受けないよう、法的な保護が提供されなければならない。

だが、傭兵は正規の戦闘員と同等の保護を受けられない。戦争捕虜に与えられる権利も認められず、その扱いは各国政府の判断に任される。

誰が傭兵であるかを見極める基準も定まっていない。国際法の下での傭兵は、主に個人的な利益を動機として紛争に加担する外国人を意味する。しかし、この動機の真偽を証明することは難しい。既にウクライナ入りしている外国人兵士には傭兵も多いが、その区別は曖昧だ。

「戦争捕虜の地位を享受できない」

ロシア側も、シリアから傭兵を受け入れているようだ。だが、ウクライナの外国人部隊についてロシアが、「合法的な兵士と見なされないなら、彼らに対してどのような行動を取っても国際法違反ではない」と主張したとしてもおかしくない。

実際にロシアは、ゼレンスキーによる外国人部隊編成の発表からわずか4日後、ウクライナ軍の外国人義勇兵を合法的戦闘員として扱わないと表明した。そうなると外国人兵士が危険に直面するばかりか、その出身国が紛争に直接巻き込まれる可能性も高まる。

3月3日、ロシア国防省報道官はウクライナで戦う外国人義勇兵全てを「傭兵」と呼び、その誰一人として「国際人道法に従って戦闘員と見なすことはできず、戦争捕虜としての地位も享受できない。最善のシナリオでも(ロシアで)犯罪者として起訴されることを覚悟しておくべきだ」と述べた。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは149円前半で小動き、介入警戒感で

ワールド

ウクライナの農産物輸出、9月は前月比10%減の21

ビジネス

需給ギャップ、4―6月期は-0.07% プラス転換

ワールド

米上院議員団、10月に日中韓訪問へ=シューマー氏事

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:2023年の大谷翔平

特集:2023年の大谷翔平

2023年10月10日/2023年10月17日号(10/ 3発売)

WBCは劇的優勝、ケガで無念の離脱、そして日本人初本塁打王へ。激動の大谷イヤーを現地発の記事と写真で振り返る

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 2

    複数のドローンがロシア西部「ミサイル工場」を攻撃、その閃光と爆音を捉えた映像

  • 3

    メドベージェフが発した核より現実的で恐しい戦線拡大の脅し

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 6

    ロシア軍スホーイ戦闘機など4機ほぼ同時に「撃墜」され…

  • 7

    中国不動産バブル崩壊で地方役人は戦々恐々

  • 8

    中国・秦剛前外相の失脚は本当に女性関係のせいだっ…

  • 9

    処理水批判の中国から日本に観光客は来て...いる? …

  • 10

    台湾初「国産潜水艦」がついに進水...中国への抑止力…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 3

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 4

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 5

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオ…

  • 6

    エリザベス女王も大絶賛した、キャサリン妃の「美髪…

  • 7

    ワグネル傭兵が搭乗か? マリの空港で大型輸送機が…

  • 8

    複数のドローンがロシア西部「ミサイル工場」を攻撃…

  • 9

    NATO加盟を断念すれば領土はウクライナに返す──ロシ…

  • 10

    ロシア軍スホーイ戦闘機など4機ほぼ同時に「撃墜」され…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 3

    【独自】祝ホームラン王!「最強の戦友」マイク・トラウトに聞く、大谷翔平の素顔

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 6

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 7

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部…

  • 8

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中