最新記事

ウクライナ危機

第2次大戦後の世界秩序が変わる時

PUTIN’S GAMBIT

2022年3月4日(金)16時15分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)
親ロシア派軍

「Z」マークが描かれた戦車に乗る親ロシア派軍の戦闘員(ウクライナ東部の親ロシア派地域、3月1日) Alexander Ermochenko-REUTERS

<フセインのクウェート侵攻やユーゴスラビアで起こったジェノサイドとも、今回のウクライナ危機は異なる。戦後に構築された平和維持と経済発展のシステムが今、巨大な壁に直面している>

ロシアによるウクライナ全面侵攻は、世界の民主主義陣営に、77年前のナチスドイツ降伏以来で最大の試練をもたらしている。

むしろ序盤戦に関しては、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の揺さぶりは、ヒトラーのそれよりも大きいと言えるかもしれない。

なにしろ現在のロシアは核を保有しており、欧米諸国の対応次第では、それを使うことも辞さないとプーチンは言っているのだ。

「たったいまプーチンは、ウクライナを支援するなら、核兵器を使用すると警告してきた。これでポスト冷戦時代のシステムは事実上終焉した」と、米ブルッキングス研究所のコンスタンツェ・シュテルツェンミューラー上級研究員は語る。

「今回のウクライナへの攻撃は、民主主義陣営全体に対する攻撃であることを理解する必要がある」

第2次大戦後、アメリカと同盟国は、再び悲惨な世界大戦が起こることを防ぐために平和維持と経済発展のシステムを構築してきた。それは冷戦時代を含めて過去80年近くにわたり、かなりうまく機能してきた。

ところが今、そのシステムは巨大な壁に直面している。

その一因は、国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが拒否権を発動すれば、国際連合はたちまち国際連盟のように無力な存在になってしまうことにある。ヒトラーと、イタリアの独裁者ムソリーニは1930年代、国際連盟をコケにして世界の舞台で傍若無人を働いた。

今回のウクライナ侵攻について、主要国は例外なく、なんらかの立場を明らかにすることを強いられるだろう。これまでロシアの近隣諸国への侵攻に曖昧な態度を取ってきた中国やインドも例外ではない。

一方、ドイツなどのヨーロッパ諸国は、重要インフラ、とりわけエネルギー供給において、ロシアへの依存を真剣に見直すべきだ。

妄想を理由に侵攻を正当化

プーチンが今やっていることと比べれば、第2次大戦後に起きた国際問題は比較的マイナーなものだったとさえ感じられる。

1956年のハンガリー動乱や1968年の「プラハの春」をソ連が弾圧したときは、冷戦のピーク時だったせいもあり、アメリカは共産圏内の出来事に首を突っ込むことに及び腰だった。

一方、90年代になって、イラクの独裁者サダム・フセインがクウェートに侵攻したときや、ユーゴスラビアの独裁者スロボダン・ミロシェビッチがボスニアとコソボのイスラム教徒にジェノサイド(集団虐殺)を働いたときは、アメリカのリーダーシップで、すぐに首謀者を国際的に孤立させることができた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド、重要鉱物で4カ国と協議 ブラジルやカナダ=

ビジネス

仏ケリング第4四半期、予想より小幅な減収 グッチに

ビジネス

ホンダ、発行済み株式の14.1%の自社株消却へ 資

ビジネス

ホンダ、通期営業益・純利益とも予想を維持 売上収益
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 7
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 8
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 9
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 10
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中