最新記事

情報分析

ボランティア集団の戦況分析「オープンソース・インテリジェンス」が、情報戦を変えた

2022年3月18日(金)15時30分
青葉やまと

オープンソース・インテリジェンスで有名な英「ベリングキャット」のロシア-ウクライナ・モニターマップ bellingcat.comより

<かつて戦局の情報収集といえば、諜報機関の独壇場だった。いまやオンラインの地図やSNSの動画をもとに、有志チームや専門家個人が真相を導き出している>

有志集団の力で情報を検証し、価値ある新たな事実を読み解く手法は、「OSINT(オシント:オープン・ソース・インテリジェンス)」と呼ばれる。既報のニュース記事や公開されている衛星画像、ひいては一般のユーザーがSNSやYouTubeなどに投稿した動画などを大規模に収集・分析し、国レベルの動向や伏せられた機密情報などを読み解くアプローチだ。

この手法はすでに、私たちが耳にする情報のなかにも浸透している。キエフに向かう64キロの戦車の車列が連日報じられたが、64キロという数字は、ロシア軍が発表したものでもウクライナ軍が独自に観測したものでもない。民間の衛星企業による高解像度画像を有志や報道機関などが解析したものであり、これもOSINTの一種だ。

午前3時、不可解な渋滞

ロシアによる侵攻開始の数時間前には、誰もが閲覧できるGoogleマップ上に予兆が現れていた。午前3時という深夜帯にもかかわらず、Googleマップ上の国境付近に不気味な渋滞が表示されていたのだ。米モントレー国際大学院のジェフェリー・ルイス教授が目ざとく発見し、車列の進軍の予兆を掴んでいた。


教授はツイートを通じ、「#OSINT にはキャリアのすべてを捧げてきたが、そんな私でさえ、@googlemaps の交通状況で侵攻の最初の兆候を掴めたことは奇妙に感じられる」と述べ、公開された情報から動きが筒抜けであったことに驚きを示している。

情報戦を公平に検証

両陣営の主張が入り乱れる情報戦において、OSINTは客観的な検証ツールとしても機能する。国際戦略研究所のジョセフ・デンプシー調査官は3月16日、ロシア軍の軍用ヘリ30機を撃墜したとするウクライナ側の主張が少なくとも部分的に正確であるとの分析結果を示した。


ロシアが占領中の南部・ヘルソン国際空港の衛星写真を解析したところ、損傷した複数の機体を確認したという。デンプシー調査官はさらに、攻撃のさなかに撮影された分析結果と最新の衛星画像とを照合し、一貫性のある結果が得られたと説明している。


いまでは多くの組織がOSINTの重要性に注目しており、ウクライナ情勢をめぐっても軍事専門家からジャーナリスト、そして貢献を希望する多数のアマチュアの集団まで、あらゆる人々がこうした情報の分析合戦を繰り広げている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国首相、フォーラムで一段の経済開放約束 日本企業

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記者に、イスラエル機がミサイル発射(レバノン)
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    人気セレブの「問題ビデオ」拡散を受け、出演する米…
  • 6
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 7
    トランプ政権の「大本営」、イラン戦争を批判的に報…
  • 8
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 9
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 10
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中