最新記事

ウクライナ情勢

プーチンの野望は「大きく後退」 元CIA長官

Putin's Ambitions 'Seriously Set Back' by Failures in Ukraine: Ex-CIA Chief

2022年3月28日(月)17時40分
ジェイソン・レモン

ペトレアス元CIA長官(2018) Mike Blake-REUTERS

<「ウクライナ侵攻の失敗はロシア軍の近代化の遅れを世界にさらした」>

米中央軍司令官やCIA長官を歴任したデービッド・ペトレアスは27日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の野望はウクライナでの軍事作戦の失敗のせいで「大きく後退させられた」との見方を示した。

ロシア軍がウクライナへの侵攻を始めたのは2月24日。アメリカのジョー・バイデン大統領を初めとする欧米の指導者たちはその数週間前からロシアによる軍事作戦は近いと警告していたが、それが現実のものとなったわけだ。

国際社会は、正当な理由のないロシアによる侵攻を非難。国連総会は3月2日、ロシアを正式に非難する決議案を圧倒的多数の賛成で採択した。

プーチンは当初、短期間でウクライナの複数の大都市を制圧し、ウクライナのゼレンスキー政権を転覆することが可能だと考えていたと伝えられる。だが侵攻開始から1カ月以上が経過しても、ロシアはウクライナの大都市圏を1つも制圧できていない。ウクライナ軍と一般市民の抵抗はロシア軍の前進を阻み、多くの西側の軍事アナリストでさえその戦果に驚いている。

「この状況が、彼(プーチン)が抱いていたかも知れない野望の実現を非常に困難にしたと私は考えずにはいられない。これはロシア軍(の進歩)を何年間も遅らせることになるだろう」と、ペトレアスは27日、ABCニュースに語った。ロシアの失敗は、ロシア軍がこれまで信じられてきたような「すばらしく近代化された軍隊」ではないことを「全世界に見せつけた」と彼は言う。

「作戦の第一段階は達成」とロシアは言うが......

近代化の遅れはこれまでも「ロシアにとって大きな課題だった」とペトレアスは述べた。「(ロシア軍が)7人の将官を失ったという事実は周知の通りだ」。また、軍事作戦が実を結ぶ気配がないことで「彼(プーチン)の野望は大きく後退することになるだろうと思わざるを得ない」とペトレアスは語った。

ところが大都市の制圧もゼレンスキー政権の転覆もできていないというのに、ロシア政府は軍事作戦の成功が見えてきたと主張する。ロシアの国防省は先週、「作戦の第一段階はほぼ達成した」とするとともに、ウクライナ軍の能力は「大きく削がれた」と述べた。

本誌は在米ロシア大使館にコメントを求めたが回答は得られなかった。

米シンクタンクの軍事研究所は19日、ロシアはウクライナにおける当初の軍事作戦に「失敗した」との分析を発表した。

「この戦争のロシアの序盤の作戦はウクライナ軍により潰えた。作戦の目的はキエフ、ハリコフ、オデッサなどの大都市を制圧し、ウクライナの政権を交代させることだった」と軍事研究所は指摘した。「作戦は終わった。ロシア軍は一部では、限定的ではあるが前進を続けているものの、この(当初予定の)ような形で目標を達成することはできそうにない」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米コロンビア大の伊藤隆敏教授が死去、インフレターゲ

ワールド

自民総裁選5候補が討論会、金融政策の方向性「政府が

ビジネス

ガンホー臨時株主総会、森下社長の解任議案を否決

ビジネス

日経平均は続伸、終値ベースの最高値更新 朝安後切り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 2
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 3
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市場、売上を伸ばす老舗ブランドの戦略は?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    「汚い」「失礼すぎる」飛行機で昼寝から目覚めた女…
  • 6
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    カーク暗殺をめぐる陰謀論...MAGA派の「内戦」を煽る…
  • 9
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 10
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 6
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中